20130511-talkshow2またもやよりによって春雨の降りしきる悪天の中、第3弾となります有隣堂のビブリオバトルが始まりました!

しかし今回は、雹が降ろうとも槍が降ろうともスペシャルな1日なのでした。
それはビブリオバトル誕生以来、初の入門書ともいえる新書『ビブリオバトル ― 本を知り人を知る書評ゲーム』(谷口忠大:著/文春新書/4/19発売)の刊行を記念した、お楽しみ企画が待っているからです。

2013/5/11(土)の「ビブリオバトル in 有隣堂」開催レポートを、
今回は、[トークショー編] [ビブリオバトル編] の2回に分けてお届けいたします!
 ■お楽しみ企画 その1

コミュニケーションを科学する ビブリオバトル考案者・谷口忠大先生

コミュニケーションを遊戯する コミュニティマネジャー・樋口悟さん
トークショー!

 ■お楽しみ企画 その2

ビブリオバトル テーマ「人-ひと-」
谷口先生と樋口さんも観覧・投票に参加して頂きます!

 ■お楽しみ企画 その3

新書『ビブリオバトル』その場でお買い上げの方に、
谷口先生がその場でサイン!


2013年に入り、ビブリオバトル人気は加速度的に高まってきています。
先日の東京都の記者会見でもビブリオバトル首都決戦2013、および高校生大会2013の11月開催が正式に発表されました。
メディアでも取り上げられることが多くなり、一度はどこかで聞いたり参加したことのある方が増えてきたようですが、皆さんはいかがでしょうか?

ビブリオバトルとは?

とある大学のとある研究室で開発された「いい本に出会えるしくみ」、本を使ったコミュニケーションゲームです。
そのルールはいたってシンプル。

1: 自分で面白い・人にすすめたいと思った本を持ち寄り、バトラーとしてその本の魅力を5分間で語る!
2: その後2~3分間、他の参加者全員との質疑応答を含むディスカッション、本の理解を深める!
3: バトラーの人数分、これを繰り返す!
4: バトラー全員の発表が終了したら、「どの本が1番読みたくなったか」を基準にみんなで投票!
5: 最も多く票を集めた本が「チャンプ本」、チャンプ本を紹介したバトラーが「チャンプ」!
今回は、このビブリオバトルがどんなきっかけで生まれたのか、なぜここまで人気なのか、今後どうなっていくのか、などなど気になる秘密にググっと迫ってしまいます。

それではおもしろトークショー、始まります!

おふたりのトークの様子はこちらの動画でもご覧いただけますよ。

当日会場に来られなかった方も、どうぞお楽しみください。


谷口先生×樋口さん ミニトークショー

20130511-talkshow

司会: まずはお二人の簡単な自己紹介を、谷口先生からお願い致します。

谷口忠大先生(以下、たにちゅー先生) 大学で働いている、週5日勤務のサラリーマンです。
「学生が本を読まなくなったから、もっと本を読ませるためにビブリオバトルを考案されたのか」とよーく言われるのですが、違います。違います!と言いたい。
僕自身が研究室にいた頃に新しく勉強会をはじめることになり、教材となる本を探していたのですがこれがなかなか見つからない。そんならみんなが面白いと思う本を持ち寄ってプレゼンして、1番みんなが読みたくなった本をみんなで読めばいいやん、という感じで始まったんですよ。サークルみたいなもの。
周りの人はみんな僕のことを「たにちゅー」と呼ぶんで、皆さんもそう呼んで下さい。

司会: それではみんなでせーの!

「たにちゅーさ~ん!!」

司会: 続いてお隣の樋口さん、一体何者なのか、教えてください。

樋口悟さん(以下、樋口さん) まず仕事の話は置いといて、横浜市緑区在住、息子3人いるんで、よくこの界隈で遊んでいます。それでなぜ僕が今日ここにいるのかといいますと、FacebookやLinkedInといったソーシャルメディアを使ってですね、オンラインでコミュニティ作ってくれとか、地域活性などの企業依頼が増えているのですが、オンラインだけでは面白くない。リアルな場で人を集めてイベントをやったりしているのが面白い。
そんな中、遊びでたまたまLinkedInで出逢った北九州の大工さんと小倉で飲んだときに話した内容が「古民家を活性化したい」という話で、これが面白いってことになって、やろう!てことでその場でその日の内にグループ結成。800人を越えるメンバーで、北九州ともうひとつ、黒豆で有名な丹波篠山の古民家を拠点にいろいろな活動をしています。
それでツアーを組んで、僕も家族連れて行ったわけなんですが、ただ古民家行っても面白くない。そこでメンバーのひとりとして今日の司会・市川も参加していた中で、「ビブリオバトルがあるよ」と。これが面白いということで、今ここにいます。

司会: ここでビブリオバトルとつながるわけですね。今日はそんなお二人に新書『ビブリオバトル』の内容をメインにお話し頂きます。
中でも、今日ご参加の皆様にもお配りしている有隣堂が発行しているフリーペーパー「有鄰」5月号に、たにちゅー先生が記事を執筆してくださっているのですが、ここでも触れられているビブリオバトルの持つ4つの機能についてお伺いしたいと思います。
その4つの機能とは、
1.書籍情報共有機能
2.スピーチ能力向上機能
3. 良書検索機能
4. コミュニティ開発機能。
たにちゅー先生、ひとつずつについてどういうことなのか、ご説明お願いします。

たにちゅー先生: なるほど。そうくるわけですね(笑)。
では一気にお話ししますね、まず「書籍情報共有機能」ですが、これはビブリオバトルは参加者が本を紹介するものなので、まさにこの機能があるのは、いいですよね。

次に「スピーチ能力向上機能」について言いますと、ビブリオバトルは5分を使って本を紹介します。実は5分間話をするチャンスは日本人には小中高大学を通して、あまりないんですね。
それから最後の投票でチャンプになるというある意味評価機能もあり、5分間の中でいかに辻褄をあわせて話せるかという点が、スピーチのトレーニングになります。なにより面白い。

それから「良書検索機能」。これは“良い本がみつかる仕組み”ということなのですが、ビブリオバトルにはチャンプ本を決めるルールがある。そうすると学校の先生や図書館の方などから、「なんで勝敗を決める必要があるのか」「みんなで好きな本を持ってくればいいじゃない」とよく言われます。でも単純に、勝つと嬉しいですよね。ドッヂボールと同じで、勝ったから負けたからといって何があるわけではないけれど、純粋に勝ちたいと思う気持ち。
ビブリオバトルは、みんなが読みたい本を持ってきた人が勝ちです。つまり、みんなで手分けして面白い本を探すゲームとも言える。これが良い本が見つかる仕組みになっています。

最後の「コミュニティ開発機能」。一見、本とは何も関わりないように思えますが、実はこれが好きでビブリオバトルを愛してくださる人が多い。
みんなが友達の家に行ってよくやってしまうこと、それは本棚をみること。「あ、お前スラムダンク全巻持ってるのか」なんて(笑)。その人が何を読んでるのか、見た目じゃわからないものです。そして、その人が何を読んでいるのかで人柄が見えてくる。

本そのものは情報や意味を持たなない文字列にすぎない。本の解釈は読む人側の個性。同じ本でも読む人によってちがってきます。
「自分はこの本が好きやねん」と話しているうちに、実は半分以上は自分のことを語っているのです。
自分のことを話すのは苦手、自分は目に見えないから話しにくい、でも本は見えるから話せる。そうして本のことを話すことで、じんわりとその人が見えてくる。お互いのことがわかってくる。
それがコミュニティ形成につながってくる、というわけです。
こんな感じでよいでしょうか(笑)。

司会: 一気にお話頂いてありがとうございます。
樋口さんも様々にコミュニティを形成し創発されている立場ですが、ビブリオバトルをご自身の体験も踏まえてどう感じていらっしゃいますか?

樋口さん: 最初に参加したのは古民家でのビブリオバトルなのですが、イベント主催者として、プレゼン者として、閲覧者として、多様な立場で参加してみて、この誰でも参加できる敷居の低さが人気の秘密なのかなと。
本だけ持っていけばできますからね。これはイベント主催者としても楽で助かりますよ。

たにちゅー先生: (お金もかからない、と指サインで訴える)

樋口さん: お金もかからない(笑)。司会も楽。これを考えた人は天才じゃないかと思う(笑)。頭いいですねえ。
誰でもできるというのがすごく魅力的。老若男女、どんな年代でもできる。

古民家での初回、うちの3人の子どもたちは「ヤダヨ」って言うかと思ったら、みんな本を持って行ったんです。
時間の都合で発表したのは1人だけだったのですが、はい!と手を挙げたのが3歳の末っ子。史上最年少じゃないかと思います(笑)。
何を発表したかといえば、こういう時大人は人に見られるから格好つけて本を選ぶのですが、末っ子はムシキングの本。
何を話すわけでもなく、本を持ってニコニコしていただけ(笑)。

でもこの時に凄い可能性を感じたんですよね。「あ、こんな小さい子でも、本で何か表現したいことがあるんだな。これは素敵なイベントだ」と。
ビブリオバトルは先生じゃなくて、ひとりひとりが主催してみる、子供に主催をやらせると子供自身のためにもなり大人も楽しめる。そんな素敵なコミュニティになるといいなと思います。

司会: 樋口さん、ありがとうございました。ビブリオバトルって凄いんですねえ。考案した人は天才ですねえ。
あっと、もうお時間がなくなってまいりました。
それではそんな凄いビブリオバトルには、これからどんな発展の可能性があるのでしょうか。たにちゅー先生にまとめて頂きましょう。いかがでしょうか?

たにちゅー先生: 数字的なことを申しますと、普及委員会でネットなどで監視していると……あ、言葉間違えました、観測していると(笑)。
福井県・群馬県ではまだ観測記録がないので、ぜひ開催して「全国で開催」となってほしい。
すでに誰とでもいろんなところで開催されていて、「古民家×ビブリオバトル」もそうですし、「妖怪ビブリオバトル」といって妖怪に熱い人が集まるものもあれば、ニコニコ超会議でSF作家による大会も開かれました。

そこで次に目をつけているのが異文化コミュニケーション。例えば留学生同士の「英語でビブリオバトル」。
ビブリオバトルをやると、その人の人となりが見えてくると同時にその人のバックグラウンドが見えてくる。実例では、韓国出身の人が三国志の本を紹介しました。そうすると日本で捉えられている三国志と微妙に違う。韓国と日本では少し歴史認識が違うので、また違った見方になるのですね。

日本人は話すことが苦手、英語で話すのはもっと苦手、ということで英語能力開発にも利用したいですね。
アメリカでもこういうゲームをする文化がないのですが、ビブリオバトルは日本人だけでなく他の国でもいいと思っています。

司会: 異文化コミュニケーションに英語でビブリオバトルをというお話。樋口さんはいかがでしょう?

樋口さん: いいですねえ。わくわくします! ビブリオバトルワールドカップ、面白いんじゃないかと。
この本にも書いてありますが、フットサルに近い。ボール1個、本1冊、気軽にできるところが世界に広まる要素を持っていると思います。ブラジルワールドカップに合わせて開催したらいいんじゃないでしょうか(笑)。

司会: 有隣堂でもワールドカップ、実現してみたいですねえ。
さあ、あっという間でございますが、終了時間となってしまいました。最後におふたりから告知情報などありましたら、どうぞ。

樋口さん: 古民家イノベーションPRJをやっているので、古民家に興味ある人はぜひ参加を。
素敵な古民家がたくさんありますよ。

たにちゅー先生: よかったら本をぜひ読んでください。
プロローグはビブリオバトルの雰囲気が伝わるようにライトノベル風に書いているので、読みやすいですし。
ビブリオバトルを学校でやると堅苦しくなってしまうのですが、上から与えられてやるものではありません。1番望んでいるのは、草の根の身内から始めるような、小さな単位でのビブリオバトルが広まってほしい。
ちょっと1回遊んでみてほしい。ぜひ。

司会: お二人とも、ありがとうございました。
2~3人の方から質問をお受けします。たにちゅーさん、樋口さんに何か聞いてみたいことがある方、挙手でお願いします。

Q: ビブリオバトルを開催する際に、おすすめのPR方法みたいなものはありますか?

たにちゅー先生: ビブリオバトルをイベントとして捉えるか、身内の活動として捉えるかで違ってきますね。
イベントとして捉えると集客がつきものですが、まずは既存のコミュニティの中のメンバーが楽しむことを第一にやってみてほしい。まずは身内で数回やってみてから、そこから徐々に広めていってもらえたらいいですね。あまり難しく考えず、コミュニティの中の人が楽しむことをやってほしい。
イベントとして開催する場合は、他のイベントと同じ広報手段になります。

Q: 著書『ビブリオバトル』自体をビブリオバトルでやってみたことはありますか?


たにちゅー先生: 直近で身近なところですと、4月発売後の週明けに勤務先大学の研究室の中でやってみました。
チャンプになれたら美しかったのですが、これが見事に敗れ去りましたね(笑)。
自著をビブリオバトルで紹介することを「自著リオバトル」と呼んでいるのですが、まず勝てないという論説があります(笑)。
しかし普及委員会のメンバーが各地で紹介してくれているようです。

司会: 短い時間の中にも濃いお話を伺うことができましたね。 さらに詳しいビブリオバトルの秘密を知りたいという方は、ぜひ『ビブリオバトル』をお読みください。


たにちゅー先生、樋口さん、本日は楽しいお話どうもありがとうございました!!
お二人にはこのままビブリオバトルをご観覧・投票に参加して頂きます!

→[ビブリオバトル編] に続く!





ゲストのお二人について


たにちゅー先生

http://www.tanichu.com/
京都市在住、谷口忠大先生。京都大学博士(工学)、立命館大学情報理工学部 知能情報学科 准教授、創発システム研究室。ビブリオバトル考案者。ビブリオバトルの普及活動に取り組む任意団体ビブリオバトル普及委員会理事・代表。
著書に『コミュニケーションするロボットは創れるか』(2010年3月刊、NTT出版)、ビブリオバトルについて初の記述書、『ビブリオバトル-人を知り本を知る書評ゲーム』(文春新書)を刊行、巷でじわじわ盛り上がりを見せるビブリオバトルに追い風を送る。
>> ビブリオバトル普及委員会


樋口悟さん

https://jp.linkedin.com/in/satoruhiguchi/ja
コミュニティマネージャー、LinkedInエキスパート。FacebookやLinkedInをはじめとするソーシャルメディアの戦略的活用を通して、大手有名企業のほか国内外問わず思いのあるプロジェクトの数々で、笑いあり涙ありの巻き込み型コミュニティの形成により成果を上げ続けている。
>>古民家イノベーションPRJ
>>g Cafe | 思いあるママとクリエイティブな子供を共創するグローバル寺子屋



文/有隣堂ビブリオバトルプロジェクトチーム 市川
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