第149回直木賞候補の6作を、受賞予想の鼎談形式でご紹介!
※ この鼎談はフィクションであり、実在する人物・小説上の人物とは関係ありません。
 
直木賞大予想
鼎 談 参 加 者
平尾才助 (55歳) ----- 書店員歴33年
悠木和雅 (44歳) ----- 書店員歴15年
野口魚子 (33歳) ----- 書店員歴 6年

悠木: さあ、またもや直木賞の季節がやってまいりました。
野口: 今回も私たちは本命・対抗・大穴と予想しなくてはならない辛い立場にいます。
平尾: 毎度のことながら、誰にも頼まれてないけどな。
悠木: 今回の候補作は6作。時代小説、ミステリー、SFなど多彩なラインナップです。
野口: しかも、傑作ばかりですね。
平尾: 早速予想していこうぜ。

候補6作をすべてご紹介! 続きはこちら




201307naoki-kyogei『巨鯨の海』
伊東潤/光文社/1,680円(5%税込)
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悠木: 伊東潤は3回目の候補です。いよいよでしょうか。
平尾: おいおい、オレたち前回伊東潤に賭けて痛い目に遭ってるんだぞ。同じ過ちをまた繰り返すつもりか?
野口: いえ、今回こそ受賞します。紛うことなき傑作ですから!
悠木: 舞台は江戸時代から明治初期の和歌山県太地町。捕鯨で生活している人々を描いた短編集です。野口の言うとおり、確かにすごい作品です。第146回候補作『城を噛ませた男』(店頭在庫HonyaClub)、第148回候補作『国を蹴った男』(店頭在庫|HonyaClub)を読んできた選考委員の先生方も目を瞠るでしょうね。
平尾: それは分かるよ。オレだって読んだもん。
野口: 鯨を捕まえる時の血なまぐささが伝わってくるような描写もさることながら、独自の掟を持つ太地の土地柄が見事に描かれています。
平尾: そうそう! そういう作品は直木賞好みなんだよな。
悠木: 古式捕鯨の盛衰の過程が見て取れるのもすばらしいです。
平尾: 確かに!古式捕鯨終焉のきっかけともなった未曾有の海難事故「大背美流れ」のあたりとか、感心するほどよく描けてるよな。
野口: …って平尾さん、この作品を本命にするのに賛成なんですか? 反対なんですか?!
平尾: あ、いや、オレだって伊東さん大好きだよ。獲ってほしいよ。でもよぉ、オレは伊東さんに神奈川を舞台にした作品で受賞してほしいんだよ。それがどうして今回は和歌山なんだよぉ。
野口: 単なるやきもちですね。
悠木: まぁ、時代小説は思わぬところで評価が厳しくなったりしますからね。我々は温かい目で見守ることにいたしましょう。

201307naoki-maha『ジヴェルニーの食卓』
原田マハ/集英社/1,470円(5%税込)
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野口: 原田マハは2回目の候補です。
平尾: ああ、この作品も捨てがたいよな。
悠木: はい。マティス、ドガ、セザンヌ、モネの、人となりと芸術が描かれた短編集です。
平尾: 彼らの傍にいた女性たちの視点で描かれてるところがいいよな。
野口: 後世に名を残す画家たちの生き様もすごいと思いましたが、彼らの才能を見出した同時代の人たちも讃えられていいと、あらためて思いました。
平尾: 前に候補になったのは『 楽園のカンヴァス 』だよな。
野口: はい。第147回の候補です。つい最近です。
悠木: 『楽園のカンヴァス』も今回の候補作も、著者得意の美術を題材にしています。他の引き出しを見てみたい、という声が上がるかもしれませんね。
平尾: その可能性はあるな。
悠木: ただ、この本を読む前と後では印象派の絵画に対する見方が確実に変わります。ご興味のある方には是非読んでほしいですね。

201307naoki-ondariku『夜の底は柔らかな幻』上・下
恩田陸/文藝春秋/1,680円(5%税込)
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悠木: 恩田陸はなんと5回目の候補ですね。
平尾: 文春だろ。本命にしなくていいのか?
野口: 文春は今年村上春樹でかなり稼いでいますから。無理に獲りにいかないんじゃないでしょうか。
平尾: そういう発言を聞くと悲しくなるな。で、どういう内容なんだ?
悠木: 舞台は「途鎖国」という、日本国内の閉鎖された国で、特殊能力「イロ」を持つ「在色者」が存在する世界です。
平尾: ああ、その説明だけで既についていけんわ。
野口: 恩田陸の超能力ものはファンには堪らないですが、確かに直木賞向きではない気がしますね。
悠木: SFは確かに弱いです。それに、かなりハードな暴力シーンがあるのも難点かもしれません。
平尾: ふうん。じゃあなんで大穴にするんだ?
悠木: 今回の候補作の中では唯一の長編なんですよ。その点では有利と言えます。
平尾: ほんとだ! あとは短編集ばっかりだ。
野口: 今回の台風の目になりそうですね。

201307naoki-ondariku『ホテルローヤル』
桜木紫乃/集英社/1,470円(5%税込)
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悠木: 桜木紫乃は2回目の候補です。
平尾: 個人的にはこの作家にも獲ってほしいな。
悠木: はい。釧路湿原を見渡す高台に建つラブホテルを舞台に、そこに関わった人々を描いた短編集です。
平尾: 渡辺淳一先生が激オシしそうな設定だな。
野口: 寂れた地方と、その土地に生きている人たちのねっとりとした暗さが滲み出ています。こういうのを書かせたら桜木紫乃はやっぱり上手いですね。
平尾: あと、時系列が遡る構成も上手いよな。第一章は廃墟となったラブホテルが舞台で、そのラブホテルを建てる前の話である最終章まで時代が戻っていくんだよ。こういう構成にすることで、より侘しさが増すんだよ。
野口: ああ、そういうの大好きです! 昭和歌謡の世界ですね。
悠木: ただ、もしこの作品が受賞したら夜のNHKニュースで「北海道のラブホテルを舞台にした作品が受賞しました」って紹介されるんですよね。それがちょっと想像つかないんですよね。
平尾: まったくお前は興ざめする男だよな。

201307naoki-ondariku『望郷』
湊かなえ/文芸春秋/1,470円(5%税込)
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悠木: 湊かなえは初の候補です。
野口: やった!この時を待っていました!
平尾: デビュー作から応援してたもんな。
野口: はい。湊さんの故郷、因島が舞台になっています。あ、作品中では「白綱島」とされていますが。島を去っていった人たち、島に残った人たち、それぞれの葛藤が描かれている短編集です。
平尾: 息苦しくなるほどの、島の閉塞感がよく描かれているよな。
悠木: はい。中でも、「海の星」という短編は日本推理作家協会賞短編部門を受賞しています。選考委員の北村薫が「ほとんど名人の技である」と絶賛した作品です。
平尾: おいおい、大穴くらいにしとかなくていいのか?
悠木: まぁ、初の候補ですからね。おそらく「次作も見てみたい」と言われてしまうのではないでしょうか。
野口: 候補になっただけでもすごいことですもんね。
平尾: そうだな。いずれ必ず受賞する作家だろうからな。

201307naoki-ondariku『ヨハネスブルグの天使たち』
宮内悠介/早川書房/1,575円(5%税込)
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悠木: 宮内悠介は2回目の候補です。第147回『 盤上の夜 』で候補になっています。
野口: あの時はデビュー作が直木賞候補、しかもSFの作品ということで話題になったんですよね。
平尾: 今回もまたSFなのか。
野口: ばりばりの近未来SFです。しかも舞台が南アフリカ、ニューヨーク、アフガニスタン、イエメン、東京と、世界にまたがっていて、暴動やら戦争やらテロなんかが絡んできて、とんでもなく壮大なスケールです。
平尾: ああ、その説明聞いただけで直木賞はないんじゃないかと思っちゃう。
悠木: 「歌姫」と呼ばれる、日本製の美少女型ホビーロボットが空から降ってくる、という鮮烈なシーンがあるのですが、このロボットは初音ミクなんだろうな、と想像できる読者にとっては堪らない作品かもしれません。
平尾: 初日の出?
野口: 平尾さん、「はつ」しか合っていませんよ。
悠木: 平尾さん年代の多い選考委員の先生方にはハードルが高い作品かもしれません。
野口: 宮部みゆき先生はお好きそうですよね。
悠木: そうだな。デビューして既に2回も候補になっているということは直木賞関係者からは特に注目されている作家なんでしょうね。
平尾: 今後も注目したい作家だな。


平尾: 以上、言いたい放題だったが、今回も力のある作品が出揃ったな。
悠木: 皆様にも是非全作品お読みいただいて予想していただきたいですね。
野口: 第149回直木賞、発表は2013/7/17(水)夜です!!
平尾: 「該当作なし」だけは何としても避けてほしいな。


作/有隣堂 加藤泉 倉田裕子 鈴木由美子


第149回直木賞は、桜木紫乃『ホテルローヤル』が受賞しました。
桜木先生、おめでとうございます!
(本の泉スタッフ 2013/7/17追記)

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