師走、暮れなずむ薄闇にまぎれコートの襟を立てて足早に道を急ぐ。
行先は横浜某所ＶＩＰ専用（？）密室。集うは年齢も境遇もまちまちの男女7人。
ただひとつの共通点は、某書店にゆかりある者――。
緊張感のみなぎる室内でいったい何が行われようとしているのか？！
「それでは皆様、お疲れ様でした！」
司会進行の乾杯の音頭とともに声が明るくなりホッとひと息。しばし互いの労をねぎらい交わされる言葉。饗される色彩豊かな食事と杯……。
2013年、いろいろありましたが「ビブリオバトル in有隣堂」が2月よりスタートしたことは、ひとつの大きなニュースでしょう。
これまで延べ300人以上の方にご参加頂きました。本当にありがとうございます。
これからもどんどんとたくさんの方にお越し頂くべく、より一層楽しい空間づくりに努めて参ります！
その研究と研鑽を積むため、有隣堂ビブリオバトルプロジェクトチームと社内有志の面々による「ビブリオバトル in 有隣堂 IN THE YURINDO 1st」が開催されました！
ビブリオバトルの楽しさや真髄を肌で理解するには、何しろ体験してみるのが一番。
嬉し恥ずかし初バトラーデビューの模様を、このレポートを読んでくださる皆様におかれましては、いつもの会場と同じく微笑ましく暖か～く見守って頂けましたら幸いです。
ビブリオバトルのルールはもう大丈夫ですよね？
ルールは簡単、>> こちら でチェック！
ビブリオバトル、スタート！
それではそろそろ始まります！
今回は出席者7人中、バトラーは6人。本のテーマはなし。自由に好きな本を持ち寄ります。
宴が始まると同時に回収した割り箸の箸袋に1から6の番号を書いた即席くじで、発表順を決定します。
1番手は水島さん。これまでビブリオバトルin 有隣堂が開催される際に観覧には参加してきたものの、バトラーとしては初めて参加となります。
「皆さんは、おはぎの別名を知っていますか？
この本はデパートの和菓子屋さんで働く主人公アンちゃんの物語であると同時に、和菓子トリビアが面白い本です。
そして登場人物それぞれが持つウラの顔が謎解きにつながっているのです」
普段の忍耐強さを知っているだけにこの発言、すごみを増してきます！
『和菓子のアン』
坂木司／光文社
単行本 1,890円(5%税込)
光文社文庫 700円(5%税込)
坂木司／光文社
単行本 1,890円(5%税込)
有隣堂の在庫を確認 | HonyaClubで詳細＆注文 |
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続いてわたくし、市川。社外のビブリオバトルにも時折ふらりと参加する流しバトラーです（笑）。
「今、最先端は田舎にある。
過疎のすすむ中国・四国地方から、行き詰まりを見せる日本経済の風穴を開けるような取組が始まっています。
この本は、都心と地方、両輪で最先端技術と地域資源の融合によって日本の豊かさを再構築するひとつの光明を示しています」
地方を訪れ、地元で採れる食材やエネルギーを使い美味しく明るく暮らす心豊かで暖かな人々に出会ってきた実感を交えて説明するつもりだったのですが、まとめきれず……。
3番手は渡辺さんの登場！ 実はこの「IN THE YURINDO」の言いだしっぺでもあります。
「お客様をワクワクさせるお店とは、どんなお店？
“売上が必ず伸びる”と書いてあるのも気になるでしょう？
2000年に発行された古い本ですが、POPの書き方や仕組み作りのカギなど、今読んでも通じるポイントがたくさんあります」
著者はこの本以降、数々のマーケティング関連本を執筆されていらっしゃいますが、初期のこの本が一番とのことでした。
4番手は立原さん。今回は、ビブリオバトル進行のわたくし市川以外は皆、初めて発表者となります！
普段一緒に仕事をしていてもどんな本を読み、どんな話をするのか分からない緊張とワクワク感がいいですね！
「ちくまプリマ―新書は“子供たちにひとつだけ伝えるとしたら何を伝えるか？”というテーマで作家達が挑むのです。
この本は、“僕”を取り巻く色々な大人達が自分の仕事の話をしていきます。唐突に始まって唐突に終わる。読み手は取り残され自身のことを少し振り返ってみたりする、不思議な余韻の本です」
著者・吉田篤弘さんらが結成したクラフト・エヴィング商會によるちくまプリマ―新書の装幀は、通巻200点すべて異なる素敵なデザインです。
さあ5番手は、小石さんです。
ビブリオバトルの運営に携わって3ヶ月、ついにバトラーデビューです。
「ヴェルサイユの荒野に水を引き、丘を削って森を刈り、自然を直線で区切って豪壮な宮殿と庭園を築き上げたルイ14世。その偉業がコンパクトなポケットサイズに収まっています。
遠近法がたくみに使われ、のぞき穴から見るといつでも迫力の景色が広がります！」
やや狙い過ぎたでしょうか？ メンバーから厳しい指摘が相次ぎます（笑）。
最後のバトラーは松本さん、5人の発表を見て余裕の落ち着きです。
「81年の少女マンガです。ご想像の通り恋愛もの、コッテコテのキラキラ系。ハーレクイン！？という雰囲気満載です。
が、実は物語を形成する柱はもう1本。明治の横浜を舞台に、リアルな時代背景を描く骨太なエピソードがおもしろいのです」
さあ、6人の発表が終わりました。この中から一番読みたくなった本はどれ？
1人1票、その場の全員が挙手投票です。
「政治的配慮は無しで！」
「あくまで本で選ぶんだ！」
社内だけに、飛び交う発言（笑）。
緊張の投票結果は……？！
『ヨコハマ物語』にチャンプ本決定しました！！
松本さん、IN THE YURINDO 1st、チャンプおめでとうございます！
参加メンバーにとって身近な港町横浜の今昔に焦点を当て、興味を湧き立たせた話術が見事な勝利となりました。
安堵の表情とともに、その後の歓談は大反省会へ？！（笑）
やはりビブリオバトルは発表者となって投票に参加することで、バトラーと観覧、お互いの心情が通じ、一緒に楽しい場を作っていこうという前向きな気持ちになれるものです。
著者と本と読み手が聞き手をつなぎ、また新しい発見やつながりが生まれてゆくのですね。
イベントなど大勢で集まって行うビブリオバトルも楽しいですが、お互いの距離の近さを感じ理解を深めることができるのは、少人数ならではのビブリオバトルの良さですね。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
皆さんもぜひ、お正月にはこたつを囲んでみかんを食べながら、ビブリオバトルを楽しんでみてはいかがでしょう？
2014年もたくさんの人と本の出逢いが笑顔でつながりますよう。
良いお年を。
それでは次回、2014/1/25(土)アトレ川崎でお会いできるのを楽しみにしています！
文／有隣堂 ビブリオバトルプロジェクトチーム 市川
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