獏の檻『貘の檻』/道尾秀介/新潮社/1,800円+税外部リンク 
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道尾秀介さんは、好きな作家の一人であるため、もちろん新刊は要チェック!
幻想的でありながら、ミステリとしての謎解きも奥が深く、どうしてこんな小説が書けるのか、若き天才はすごいと唸らずにはいられませんでした。
1年前に離婚して、さらに職も失ってしまった辰男は、別れた妻と暮らす一人息子の俊也と久しぶりに会い、親子の時間を過ごした後の帰り道、一人の女性がホームから転落するのを目撃します。その女性がホームから落ちる瞬間、目が合った辰男は顔の傷から、彼女がかつて父が犯したと思われる殺人事件と何らかの関わりを持つのではないかと疑われたまま、32年間消息を絶った曾木美禰子だということに気がつきます。事件の後、父は帰らず何日か後に村の水路で遺体となって発見されます。

父が犯したと思われる罪のため、住んでいた村を母親と追われた辰男は、その事件が17年前に被疑者死亡のまま時効を迎えても、真実をつきとめることもできないまま、細々と幸せに暮らしていました。
が、辰男はこれを機に、32年前に本当は何が起きたのか? そして、どうして行方不明だった美禰子が、自分の目の前で命を落としたのか?
同じO村に住んでいて事件が起こった後も懇意にしてくれていた、三ツ森からの電話をきっかけに、住んでいた村を再び訪れることにします。そして、真実を明らかにしようとします。

そして、ここから、横溝正史ばりのドロドロした閉鎖空間がとめどなく続いていきます。辰男が夢にうなされるようになるところから、何が幻なのか、夢なのか、読んでいるこちらの方もだんだん区別がつかなくなっていきます。さらにあの初期の頃の道尾作品のどんよりとしているような、怖いような、それでいて心をつかまれ、ひきずられていくような独特の世界が広がっていきます。そう、これが道尾作品の本当の魅力なのです!

誰が誰を殺したのか? 次々と明らかになる驚愕の真実に、思わずページをめくる手を止めることができませんでした。
そして、ラスト。数々の謎が明らかになったその向こう側には、思いも寄らない真相が。
私には、何だかミステリというよりも、切ない極上の恋愛小説のような気がしました。道尾秀介は、やはり天才です。こんなすごい小説を書けるのですから。

文/ 厚木店・AS
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