第152回直木賞候補の5作を、受賞予想の鼎談形式でご紹介!
※ この鼎談はフィクションであり、実在する人物・小説上の人物とは関係ありません。


180野口 さあ、いよいよ直木賞の季節がやってきました!
悠木 今回は3人ともバラバラの予想になりました。
野口 私は本命・西加奈子さんで! これは譲れません!
平尾 オレ、青山文平!
悠木 私は木下昌輝さん推しなんですよ。さて、困りました。
平尾 どうすんだよ。年功序列でオレが決めることにするか。
野口 ちょっと待ってください! ちゃんと話し合って決めましょうよ。
悠木 そうですね。今回候補になられた5人のうち3人が初候補です。
平尾 予想するの簡単なんだか難しいんだか分かんねえな。該当作なしもじゅうぶん考えられるぞ。
悠木 まあまあ。波乱含みのスタートですが、早速予想してまいりましょう。

候補作を5冊すべてご紹介しています!続きはこちら
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鼎 談 参 加 者
平尾才助 (55歳) --- 書店員歴33年
悠木和雅 (44歳) --- 書店員歴15年
野口魚子 (33歳) --- 書店員歴 6年



本命『悟浄出立』万城目学 『悟浄出立』
まきめ まなぶ  ごじょうしゅったつ


新潮社/1,300円+税

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平尾
おい! オレたちの中の誰も万城目学推してないじゃないか! それなのに「本命」って、どういうことだよ!
野口
そうですよ! なんか政治の匂いがします!
悠木
まあまあ。落ち着いてください。ここ最近の直木賞は、作品に、というよりもコンスタントに作品を発表しているベテラン作家にきちんと授賞している、いわば功労賞的性格を取り戻している印象が強くないですか。万城目学は5回目の候補です。今回の候補者の中ではダントツに多いんです。これは万城目学受賞の好機と捉えていいと思います。
野口
うっ。それを言われると強く出られません。
平尾
確かにな。今回候補になっている『悟浄出立』はこれまでの万城目ワールドとは一味違う感じだしな。
悠木
関西を舞台に『鴨川ホルモー』『偉大なる、しゅららぼん』など奇想天外な長編を描き続けてきた万城目学ですが、今回は中国の歴史や文学に材を得て、西遊記の沙悟浄や三国志の趙雲、司馬遷の娘といった脇役にスポットを当てています。この作家の転機とも言える短編集ではないでしょうか。
野口
そうですね。『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』といった、これまでの候補作に付いていけなかった選考委員の先生方も「おっ」と思われるかもしれませんしね。
悠木
切なさが残る読後感もいいんですよ。どんな脇役でもその人にとってはかけがえのない人生、と思わせてくれるあたりは直木賞好みだと思います。
平尾
よし。今回はこれでいくか。しかし、言っておくがオレは青山文平って言ったからな。
野口
私も西加奈子さんって言いましたから!
悠木
はいはい。



対抗『サラバ!』西加奈子 『サラバ!』
にし かなこ  さらば


【上巻】小学館/1,600円+税
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【下巻】小学館/1,600円+税
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悠木
西加奈子は2回目の候補です。第148回の時に『ふくわらい』で候補になっています。
野口
はい。その回の選評で選考委員の林真理子先生が「この作家はセンスがある」と褒めていらっしゃるんですよ。今回も林先生が推してくれるのではないでしょうか。
悠木
ただ、その回で同じく選考委員の宮部みゆき先生が「これは直木賞なのかな。芥川賞じゃないのかな」とも仰っているんですね。確かに、純文学に近い西加奈子の世界観と直木賞の性格がマッチしていない気もするのですが。
平尾
まあ、でも上下巻の大作を芥川賞候補にするわけにもいかないしな。今回は直木賞候補でいいんじゃないか。
悠木
その「上下巻である」というのは結構ネックですね。西加奈子の現時点での集大成のような作品ですが、「長すぎる」と評されるような気もします。
野口
この『サラバ!』は、圷歩(あくつ・あゆむ)という主人公が生まれてから小説を書くまでの37年間を描いた作品です。イラン・テヘラン生まれ、エジプト・カイロ育ち、という西さんのプロフィールと全く同じです。主人公に著者自身が強く投影されていると考えていいと思います。
悠木
確かに著者がこの作品にものすごく力を入れていることが読んでいて分かります。「自分の信じるものは自分で決めろ」というメッセージも強く伝わってきました。
平尾
この主人公の姉ちゃんの貴子ってのがすごい人なんだよな。オレ読みながら爆笑しちゃったよ。
悠木
作品世界にのめりこんでしまえばあっという間に読んでしまえる作品です。選考委員の先生方がのめりこめるかどうかが肝なのではないでしょうか。



大穴『宇喜多の捨て嫁』木下昌輝 『宇喜多の捨て嫁』
きのした まさき  うきたのすてよめ


文藝春秋/1,700円+税

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悠木
木下昌輝は初めての候補です。
野口
なんと、デビュー作なんですね!
悠木
戦国時代の備前・備中が舞台で、謀将と呼ばれた宇喜多直家を中心に据えた連作短編集です。著者はこの表題作でオール讀物新人賞を受賞しました。
平尾
信じられん。すごく面白かったぞ。戦国時代と言えば下剋上の世だけど、特に中国地方は暗殺とか裏切りとかが最もひどい地域だったことがよく分かるな。血生臭さが漂ってくるようだったぞ。
野口
冒頭の表題作は、政略結婚の道具として後藤家に嫁がされた直家の四女・於葉(およう)の視点で描かれています。この1篇だけ読むと、宇喜多直家ってなんておぞましい人物なんだろう!と思うのですが、読み進めていくにつれて直家の凄絶な幼少期や、武力よりも策略をめぐらすようになった理由が分かってきて、いつの間にか直家に心を寄せていました。
悠木
読み終わった後も強烈に心に残る作品です。初の候補で受賞した朝井まかて『恋歌』の例もあることですし、ひょっとしたらひょっとするかもしれません。



『鬼はもとより』表紙青山文平 『鬼はもとより』
あおやま ぶんぺい  おにはもとより


徳間書店/1,700円+税

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悠木
青山文平は初の候補です。
平尾
信じられん。オレが「本命」って言っているのに「対抗」にも「大穴」にもしなかったんだな、お前は。
悠木
すみません。今回はどうしても木下昌輝を入れたかったんです。
平尾
ふむ。まあ『宇喜多~』も相当面白いからな。よしとするか。
野口
この『鬼はもとより』、書き下ろし作品なんですね。びっくりしました!
悠木
舞台は江戸時代中期。主人公は、ある藩の藩札掛(はんふだがかり)を務めるも脱藩した奥脇抄一郎という人物です。江戸で万年青商いをして細々と暮らしていた奥脇のもとに、北国のある貧しい小藩からお国立て直しの相談が持ちかけられます。
野口
「藩札」という言葉を今回初めて知りました。江戸時代に各藩が独自に領内で発行した貨幣なんですね。
平尾
主人公は今で言うところの「コンサルタント」だな。その島村藩の経済を、藩札を用いて救おうってわけだ。
悠木
はい。時代小説でありながら経済小説の面白さも併せ持った作品です。書評家の縄田一男さんが「全企業人、サラリーマン必携必読の書」と絶賛なさっていたのも頷けます。
平尾
武士と商人の違いっていうのも考えさせられたよな。やっぱり一国の経済を立て直すのは武士じゃなきゃダメなんだよ。
野口
どうしよう! この作品が受賞してもおかしくない気がしてきました!



『ミッドナイト・バス』大島真寿美 『あなたの本当の人生は』
おおしま ますみ  あなたのほんとうのじんせいは


文藝春秋/1,600円+税

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悠木
大島真寿美は初の候補です。
野口
2012年本屋大賞で『ピエタ』が3位になっている作家ですからね。我々書店員にはおなじみの作家です。私は大島さんを「対抗」にしたかったです。
悠木
伸び悩んでいる新人作家・國崎真実という女性が、幼い頃から憧れているファンタジー作家・森和木ホリーのもとに弟子として住み込みで働くことになります。
平尾
で、いつの間にか主人公はコロッケを揚げまくってるんだよな。オレはちょっとついていけなかったぞ。
悠木
年老いてシリーズものの続きを書けなくなったホリー先生の姿は、選考委員の先生方にとってきっと他人事とは思えないはずです。「筆一本で世界を作れてしまう」作家の業の深さと孤独感を味わわせてくれる作品と思いましたが。
野口
読んでいる間、「あなたの本当の人生は?」とずっと問いかけられているように感じました。このあたりは西さんの『サラバ!』に通じるものがあると思います。今回5作の候補作を読んで、自分にとって何が一番大事なのか、すごく考えさせられました。
平尾
野口がいい読書をしたということで、今回はめでたしめでたし、だな。



平尾
以上、言いたい放題だったが、今回も良作ばかりだったな。
悠木
皆様にも是非全作品お読みいただいて予想していただきたいですね。
野口
第152回直木賞、発表は2015/1/15(木)夜です!!
平尾
「該当作なし」だけは何としても避けてほしいな。


文/有隣堂 加藤泉

第152回直木賞は、
西加奈子『サラバ!』が受賞しました!!

西先生、おめでとうございます!

(2015/1/15追記 本の泉スタッフ)
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