罪の声『罪の声』/塩田武士/講談社/1,650円+税外部リンク 
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グリコ・森永事件といえば、30代後半からの世代にある種の同じ感慨を与える事件だと思う。
事件が発生したころには私は子どもだったが、それでも、該当の会社のキャラメルは何か良くないことの象徴のようなイメージに直結してしまった。お菓子を食べる前には食べてよいかどうか、必ず親に確認をとる習慣はそれをきっかけに始まったという記憶も残る(もちろん、今では徹底した安全管理でそれを払拭した、というプラスの印象を持っている)。
『罪の声』は、未解決事件として昭和の犯罪史に残る「ギン萬事件」の脅迫電話に使われた幼子の声が「自分の声ではないか」と主人公が気付く場面から始まる。
「ギン萬事件」は「グリコ・森永事件」がモデルになっており、会社の名前が違うだけで、ほぼノンフィクションともいえるほど、著者の筆致は現実の事件の真相に迫っている(ように読める)。

「グリコ・森永」と聞いて同じイメージを浮かべる世代にとっては、本書の中で暴かれる「ギン萬事件」の真相に静かな興奮を覚えずには居られない。
同時に、何も事情が分からない子どもを有無を言わせず犯罪に巻き込む卑劣さ、あるいはもう一人の主人公である新聞記者の青年の成長ぶりが胸を打つ。

本屋大賞候補にもノミネートされている、ページをめくる手がとまらないミステリー。
おすすめです。

文/ テラスモール湘南店・RS
 
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