痛い、苦しい…。
主人公たちは中学生。
大人になった自分が読んで、共感できるものだろうか。
装丁に惹かれて売場で手に取ったときは、そう思っていた。
まさか読み始めてすぐに、胸がつぶれそうになる気分を味わうことになるとは、思ってもみなかった。
学校に行けず、部屋に閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然、鏡が光り始めた。
輝く鏡をくぐり抜けた先の世界には、似た境遇の7人が集められていた。
9時から17時まで。時間厳守のその城で、胸に秘められた願いを叶えるため、7人は隠された鍵を探す――。
主人公のこころの他には
ジャージ姿のイケメンの男の子。
ポニーテールのしっかり者の女の子。
眼鏡をかけた、声優声の女の子。
ゲーム機をいじる、生意気そうな男の子。
ロンみたいなそばかすの、物静かな男の子。
小太りで気弱そうな、階段に隠れた男の子。
それが鏡の中の世界で出会う中学生たち。
読み始めると少し後悔。
ミステリー特有の、クローズドサークルでの出来事とルール。それを楽しむようなものを期待していた私には、ページがなかなかめくれない。
だって。
残忍な、というような派手ないじめではないけれど、こころの“心”をひび割れさせた学校での出来事。
ああ、こうやって、人は傷つき、また傷つけた人はそれを感じることができないんだ。
そして徐々に現実世界での話をお互いにし始める。
誰にも言えない気持ちを抱えて、押し殺した声を上げ始める。
なんだか絶望的な気持ちになる。
だって、こどもたちがこんな思いをしているなんて。
しかも、閉ざされた世界で似た境遇だったはずの7人の中でも歯車が軋みだし、現実世界でも鏡の中の世界でも、追い詰められていく…。
でも、
重いページをめくって読み進むと、中盤で一気に世界は動きだし、こころとその仲間が外に向かって叫びだす。
その後は彼らを応援しながら、どんどんページは加速度が増して進んでいくようになる。
がんばって。がんばって。
そして物語は終焉を迎え、ああこれが辻村ワールドと思い知ることになる。
物語の出来栄えはもとより、辻村深月好きにはたまらないテイストも、やっぱり今回もちりばめられていたのだ。
また、次の作品も読んでしまうんだろうな。
文/ 新百合ヶ丘エルミロード店・MH