33743916『さよなら未来 エディターズ・クロニクル 2010-2017』/若林恵/岩波書店/2,200円+税外部リンク 
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ゴールデンウィークも終わり、日本の「国民病」ともいえる5月病が蔓延し始める頃でしょうか。
書店の店頭でもそれに合わせ、気持ちが軽くなるような心理エッセイや自己啓発本を並べてフェアを展開する、といったことがこの時期によく見かける風景ですが、今回紹介する本はそういった種類のものとは趣の異なる1冊です。
本書の著者である若林恵さんは『最新のテクノロジーニュースから、気になる人物インタヴューや先端科学の最前線など「未来のトレンド」を発信する』雑誌である「WIRED日本版」(現在は休刊中)の編集長を2012年から昨年12月まで務められていた方です(現在は「黒鳥社」 https://blkswn.tokyo/ を立ち上げられています)。
本書は若林さんが2010年から2017年までの間に雑誌やWEBなど様々なメディアで書かれた文章を集めたものになっています。

「未来」をテーマにした雑誌を手がけていた方が「さよなら未来」とは一体どういうことなのでしょうか。

本書の出発点には「未来とは何だ」という問いがあります。未来とは我々が思い描くSF映画のような「完全無欠」なものなのでしょうかと。我々は「未来」というものが巷で話題の最新テクノロジーがどこからともなく連れてきてくれるものと思ってはいないでしょうかと。
若林さんは本書の中で「未来なるものをもう少し原理的なところから考えてみようといことになると、それはどうしたって現在を考えることになるし、それがどうやってかたちづくられたのかを考えようとするとどうしたって過去と向き合うことになる」と述べます。そうやって今まで一足飛びにありがたがっていた「未来」に対する我々の姿勢をここでリセットして(「さよなら未来」して)、まずは「過去」「現在」から考え始めることでしかこの先のことを語れないのではないかと本書は我々に訴えてきます。

「未来」というものについて常に考えてこられた著者だからこその視点であり、この視点で書かれる文章は今までの自分の思考軸をいとも簡単に外し、違う景色を見せてくれます。
本書の中で若林さんが鶴見俊輔さんの『文章心得帖』(ちくま学芸文庫)から引用していますが、それによると「それを読んでいると思いつき、はずみがついてくる」のがいい文章だそうで、若林さんの文章はまさにそれにあたるのではないかと思います。

先が見えないと嘆く態度は未来に囚われているということに他なりません。本書はそこから脱局するためのヒントに満ち溢れた「希望」の1冊です。

ちなみに5月病は思い描いていた未来とのギャップに思い悩むことが原因のようです。本書を読めば「さよなら未来」ですから、5月病も治るかもしれません(お後がよろしいようで。え? よくない?)。

文/ STORY STORY(小田急百貨店新宿店本館10F)・HS


> Webサイト「さよなら未来」 https://sayonaramirai.com/
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