482『ベルリンは晴れているか』/深緑野分/筑摩書房/1,900円+税外部リンク 
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主人公は17歳のアウグステ。
ナチス・ドイツが戦争に敗れ、米ソ英仏4ヵ国の統治下に置かれたベルリンで、
得意の英語を武器にアメリカ軍施設で働き自立する、闊達だけど孤独な少女の物語。
舞台は1945年、爆撃にさらされた姿のままの瓦礫の街・ベルリン。

物語は傷つきながらも懸命に生きるアウグステと、口達者な泥棒カフカとの旅立ちから始まる。
敗戦国民ドイツ人の少女と “ユダヤ人” の男、軽口を叩きながら真夏の街を縦横無尽に疾走して、これから訪れる新しい時代を予感させるふたり。
しかし少女がどのように戦中を過ごし、男がどう生きたかが語られ始めると、物語は一変する。

物心ついた頃より国民主義を掲げる体制下に育ったアウグステの回想は過酷だ。
もし彼女と同じ時に生まれていたらどうするだろうと考えては、答えが見つからず、何度も茫然と本を閉じた。
答えがわからないままでは、傍観しこの体制に反対しなかった人々と私も同じなのではという意識に苛まれ、怖くなる。
自分の無力さと時代への憤りと失われるものへの悲しみで苦しく辛い読書が続くが、彼女の生きるさまを見つめ応援したい気持ちを奮い立たせて読み進めた。

アウグステの住まう街と心を熾烈に焼く炎が訪れたとき、彼女自身の内側に猛獣が目を覚ます。
それでも彼女は生きることを選び、天国へ行ける善人ではないとしても生きて前進した。
やがて回顧は1945年現在に繋がり、物語を貫く謎も解き明かされる。
 
そして最後の一行にこの物語のクライマックスが。
自由と平和をアウグステが感じた瞬間、読み手の我々にも物語の終わりと同時にその時が訪れる。
長く辛い戦争の終わり。
この感覚を紙上でしか知り得ない幸いを深く噛み締めた。

文/ アトレ目黒店・RM
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