902『ある男』/平野啓一郎/文藝春秋/1,600円+税外部リンク 
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妻子を残して事故死した男は、戸籍とは全く別人であった。
では一体何者なのか?

そんな謎解きに魅了され、一気に読了。
しかし、あー面白かった! では終わらせないのが平野啓一郎。
必然的に序文に戻ってみれば、気になりつつも先を急いでしまった多くの箇所が、途端に重みをもって迫ってくる。
そして必然的再読。
 
謎を追う弁護士・城戸は、中年の悲哀感たっぷり。妻ともうまくいっていない。恵まれて育ちはしたものの、年とともに自分の出自に対する不安が増し、心に影を落としている。
城戸はバーで、やはり出自に傷を持つ別の男になりきることで、かえって自分を取り戻す。
 
男たちの影と影が入り混じる、なんともいえない暗い混沌に、読んでいる私も迷い込み酔いしれた。
暗さを救うのはやはり愛。
愛する事、愛されること、そしてその記憶が人を生かしつづけるのか。

全体を通して際立つのは、平野啓一郎ならではの美しい純文学的表現!
うっとりじっくり味わいながら、
自分が自分であることの意味についても深く考えさせられた。
 
文/ 新百合ヶ丘エルミロード店・YM

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