100『湯遊ワンダーランド』2巻/まんしゅうきつこ/扶桑社/900円+税外部リンク 
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自分ではとても良いと思っているし皆にも良さを知ってほしいとも思っているけども、実際人に勧めてみると今ひとつな反応をされてしまうので、勧めるのをためらってしまうものがある。

銭湯。

「温泉行きたいねー」というやりとりはよくある。でもこれは温泉に入りたいというよりも、『仕事や家事を休んで上げ膳据え膳でのんびりしたい』がメインだ。

そこで「銭湯いいよ」と言うと、「いや家に風呂あるし…」とか返される。
ちがう、入浴施設としての銭湯を勧めてるわけじゃないんだ、いや入浴はするけど。
うちにだって風呂はあるが集合住宅の足も伸ばせないせまい湯船だし、だいたい水風呂も併設されてない。
そう、水風呂だ。重要なのは。

でも強引な勧誘はだめだ。「すっごくいいから!」と押し付けて、興味どころかうっとうしがられてしまうのはこわい。
勧めるのに適切な言葉を持っていない。
そんな時、代わりににスッ…と差し出したいのがこの漫画。
風呂の漫画なので裸の生き物がたくさん出くるが、エッチではないので人混みの中で読んでも安心な仕様。

風呂啓発漫画っぽくはない。
風呂の健康上の有用性を説いてるわけでもない。
風呂がテーマだが、描かれているのは弟夫婦の家に居候しながら漫画を描き銭湯に通う作者の生活と、社会と入浴で得られるちょっとした快楽(と依存)だ。

『週刊SPA!』にスパ(入浴施設)がテーマの連載というのはなにかそういうギャグなのか、それはわからない。
ずっと読んでいたい心地よさがあるので続いてほしいが、いつ終わっても不思議じゃない連載、作者と担当編集氏とのいいのか悪いのかわからない緊張感のある関係(一緒に鯉こくを食べに行ったり、あとがきで死んだり殺されたりする)等のスリリングさも良い。

全然風呂が出てこない回も結構ある。
例えば1巻でいちばん好きなのが、山奥の古民家(サウナ付)に住まい、ユンボで畑を耕し動物と戯れながら漫画を描く生活をする(有刺鉄線で敷地を囲んで守ってあるしゾンビが襲ってきても猟銃免許があるので安心)、という夢を、ベランダに遊びに来るカラスに語る回だ(そして「一緒に来る?」と誘う)。
一見突飛だが、この理想郷が「刺さる」人はそれなりにいるんじゃないだろうか。
すごく正直な漫画なのだ。

入浴中、人は内省的になる。
毎秒ごとの、記憶にも残らないとりとめのない思考を丁寧に書き留めてみたら、こんな漫画になるのかもしれない。
 
文/ アトレ亀戸店・YK
 
\ぜひ第1巻から/

『湯遊ワンダーランド』
1巻
900円+税
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『週刊SPA!』の連載タイトルは『湯遊白書』。改題して単行本化されました。
(本の泉スタッフM)
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