TVで取り上げられたのがそのきっかけだったのか、今となっては記憶もおぼろげですが、3年前突如ベストセラーとなり、一時品薄にまでなった本書がついに文庫になって登場です。
入試倍率が東大の約3倍(最難関学部同士での比較)という、東大より入るのが難しい東京藝術大学。
狭き門をくぐり、そこで学ぶのはいったいどんな人たちなのか。
マンガ大賞2019の3位入賞作『ブルーピリオド』(2019/4/2・ミウィ橋本店がご紹介|4/19・シャポー小岩店がご紹介)の主人公が目指している大学ということもあり、最近このコミックにハマってしまった私としましては、今更ながら興味深く拝読しました。
美術学部(通称、美校)、音楽学部(同、音校)の様々な学科の学生さんに満遍なくインタビューしているため、残念ながら『ブルーピリオド』で目指している油画専攻の学生さんのエピソードはあっという間に終わってしまいましたが……。
しかし、そこにいるのは皆総じて、やはりただ者ではない人たちばかり。
入るのも難しいですが入った後も、いや入った後のほうが難しい。
なにせ芸術とは、教えられ勉強するものではなく、教授や周りの人から技術を盗むことはできても、結局は自分の表現として日々研鑽し昇華させていくしかないものなのですから。
アウトプットの量を想像するに、なんて過酷な毎日。
けれど登場する学生さんたちは皆どちらかというと楽観的でおおらか。
好きだから苦にならないという学生さんから、果ては芸術に憑りつかれてその道から外れたくても外れられないという諦観すら滲ませる学生さんまでいるほど。
凡人の私からは想像もつかない生き方で、なんとも先行きが心配になってしまいますが(実際卒業生の半数は行方知れずになるらしい……)、当の本人たちは毎日エネルギッシュで楽しそう!
自分のいる社会とはまったく別の社会がそこにはあると知り、タイトルの「最後の秘境」と言う枕詞には妙に納得させられてしまいました。
フツーや常識に嫌気がさしたら、ぜひご一読を。
本書を原作にしたコミックの第1巻も発売中です。
ぜひそちらもあわせてご覧になってみてください。
文/ ルミネ横浜店・M.M.