703『しっぽの声』1巻/夏緑:原作 ちくやまきよし:作画 杉本彩:協力/小学館 ビッグコミックス/552円+税外部リンク 
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ペット漫画である。
ただしペットのかわいさが主題ではなく、視線はシビアだ。

近年まれにみるペットブームが続いている。
テレビで、書籍で、SNSで、動画サイトで、愛らしい動物の姿が日々提供され、多様なニーズに答えるべくサービスや商品の開発、医療も進み、ペット関連業はもはや一大市場だ。飼育動物としてメジャーな犬猫だけでなく、珍しい種を求める人も増えている。
市場の拡大でヒトも動物もwin-win……

本当にそうなのだろうか。
本来の生息地とかけ離れた飼育環境で暮らす動物を見て、ペットショップでだいぶ大きくなってしまっても売れ残っている動物を見て、少しでも違和感や罪悪感を持ったことはないだろうか。
そして動物を家族に迎え入れたことのある人なら誰しも思ったことがあるだろう「人に飼われる動物にとって、幸せであるということはどういうことなのか?」という問い。
どこから手を付けたらいいのか途方に暮れてしまうような問題に、この漫画は糸口を与えてくれるかもしれない。
1巻は犬猫ブリーダーの飼育崩壊がテーマだ。
何事もそうだが、ペットにもまた流行り廃りがある。メディアで取り上げられて一時は需要があっても盛りを過ぎれば“過剰在庫”。
生きている限り餌を食べ排泄し動き回る多数の「在庫」を抱えたその結果、どういう地獄が生まれるか……
 
直情的で柔軟性に欠けるが動物への愛情は人一倍、留学で培った知識が豊富な獣医師・獅子神と、口が悪く手段を選ばぬ荒っぽさがあるが的確な対処で動物を救うアニマルシェルターの所長・天原が中心となってペット産業の闇に光を当てていく。

獅子神と天原は動物を救いたいという気持ちは同じだが、手段や考え方の違いが顕著だ。しかしどちらの言い分にも理があるように聞こえる。
時にぶつかりながら動物にとって最良の道を模索する2人の姿を見た読者は、議論に引きずり込まれずにはいられない。

映像であれば目を背けたくなるだろうショッキングなシーンもあるし、ペットショップのケージの中で遊ぶ動物たちの姿を今までのように無邪気に楽しむことも難しくなることは確かだろう。しかし読み進めていれば、自分にもできることはある、とも思わせてくれる。
今の日本において現在進行形で起こっていることである、ということを心に刻みながら読みたい漫画だ。

文/ アトレ亀戸店・YK
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