893『うつ病九段』/先崎学/文藝春秋/1,250円+税外部リンク 
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皆さんは「将棋の棋士」と聞くと、どんなイメージを抱くでしょうか。
誰かの名前をあげるなら、羽生善治さんや“ひふみん”、最近なら藤井聡太さん?
いずれにせよ、一風変わった天才たち、という印象を持つ方が多いでしょう。

著者の先崎学さんは将棋の棋士。
「九段」とは現在の将棋界における最高段位で、つまり一流棋士の証です。
週刊誌で連載を持つなど文才にも定評があり、まさに頭脳労働のエキスパートとして活躍してきました。
そんな著者を襲った、うつ病。
本作は、著者がリハビリを兼ねて辛い闘病の日々をつづったものです。
重症時の変調した思考を率直に書きつつも、「それは病気だからだ」という指摘を受け入れて、
ごく客観的に振り返る様子は、まるで将棋の感想戦のようでもあります。

闘病記としての本作が訴えることは非常に明快です。
うつはどんな人でも患う病気であること。
そして何より、「うつは死ななければ必ず治る病気」だということ。
著者の向き合い方が参考になるかはさておき、うつに関わる人にとっては、力をくれる一作でしょう。

一方で、軽妙な語り口を堪能できる将棋エッセイ的な側面もある不思議な本です。
少しでも早く回復したいと医師の言いつけを守る一方で、将棋のことになると好き勝手。
無理な練習をしては疲労で寝込む様子からは、人生を捧げた競技への執着と自負が感じられます。

そしてついには、確かに回復の兆しを見せ「私は将棋でうつを治したのだ」と言い放つのですから、
感心すれば良いのか心配すれば良いのか、とにかく圧倒されてしまいます。

ときおり混じるユーモアに口元が緩んでしまうこともあるかもしれませんが、不謹慎だと思う必要はないはずです。
それはきっと、著者が本当に将棋でうつを治してみせた証拠でしょうから……。

文/ 厚木店・YI
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