『図書館ねこデューイ 町を幸せにしたトラねこの物語』
ヴィッキー・マイロン:著 羽田詩津子:訳/早川書房 ハヤカワ文庫NF/900円+税
図書館ねこというコトバだけで、本と猫が好きな人は「おっ」と思うかもしれません。
私もその一人。書店でタイトルをみて惹かれ、読み始めました。
ヴィッキー・マイロン:著 羽田詩津子:訳/早川書房 ハヤカワ文庫NF/900円+税
図書館ねこというコトバだけで、本と猫が好きな人は「おっ」と思うかもしれません。
私もその一人。書店でタイトルをみて惹かれ、読み始めました。
凍えるような冬の朝に、図書館の返却ポストに捨てられていた子猫のデューイが図書館で飼われるようになり、
やがて図書館の利用者や、まちの人々とのふれあいの中で、彼らに勇気や希望を与えていくというもの。
ノンフィクションです。
表紙をめくると、まずはこの物語の主人公デューイの写真がのったカラーページが続きます。
図書館の備品の箱の中で眠ったり、やってきた子ども達に頭をなでさせたり。
どれも少しぼんやりとして、懐かしい感じのする写真たち。その場の暖かな雰囲気が伝わってきます。
タイトルやあらすじから、童話のようなファンタジックな物語や、もっと軽い読み物を想像してしまうかもしれません。
ですが、最初の数ページを読んでいただければ分かるように、読み応えのある結構骨太な文章です。
図書館のあるスペンサーのまちが、当時どんな状況におかれていて、そこに住む人々の生活はどうだったのかまで詳らかに書かれているので、リアリティがあります。
だからこそ、子猫のデューイが冷たい朝に返却ポストから見つかるときの描写は、まるで映画のオープニングのようにドキドキしますし、それぞれに問題を抱えた利用者たちが、デューイとの関わりによって変わっていく様には思わず頬がゆるみます。
最後まで読み終えて本をおいたとき、私は主人公のデューイとずいぶんと長い時間をすごしたような気がしました。
猫は好きだけれど、飼うことができないという人には、とくにおすすめかもしれません。
ページを開けば、いつでもデューイがそこで待っていて、そっと心に寄り添ってくれる。そんな一冊です。
文/横浜駅西口ジョイナス店・UK