暴虎の牙『暴虎の牙』 孤狼の血シリーズ完結編/柚月裕子/角川書店/1,800円+税外部リンク 
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「孤狼の血」というシリーズの完結編ということですが、この小説単体でも十分面白く読めます。

昭和の広島、愚連隊の抗争。
昭和の街並み、もつ焼き屋、パチンコ屋、暴走族。
街にも店にも男にも女にも、匂いのあった時代。
 
ヤクザの父親を持つ沖虎彦は、父親に暴力をふるわれヤクザ嫌い。
そしてそのカリスマ性で、ヤクザも恐れぬ「呉寅会」という愚連隊を率い、勢力を伸ばしてゆく。

暴力的なシーンが多く、心の中で「うわあ」「ぎやあ」と言いながら読んでゆく。
なかなかの臨場感で、読んでいる間は、台所に立つと、「なめとんのか、こんなら」とつぶやきながら大根を刻み、「おどりゃあ」と味噌を投下したりしている。
昭和には、ヤクザ映画の2本立を見て、肩を怒らせて映画館から出てくるおじさんたちがいましたが、私も同類ですね。数十年経って知りました。
 
 
沖虎彦は、暴力が当然、妥協や裏切りを許さない。
ひとたび裏切れば、凄惨な制裁が待っている。

そんな虎彦の子供の頃の情景が、たまに語られる。
父親に殴られて吐いたこと、おそらく入水を考えていた母親と妹と見ていた海。

ヤクザも警察も虎彦を追っていたが、結末は意外な形で訪れる。
熱くて冷たい男の物語。

文/ ラスカ小田原店・MT


\ シリーズ第1作 /

『孤狼の血』
KADOKAWA 角川文庫/760円+税
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\ 第2作 /

『凶犬の眼』
KADOKAWA 角川文庫/780円+税
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