914『航路』 上/コニー・ウィリス:著 大森望:訳/早川書房 ハヤカワ文庫/1,180円+税外部リンク 
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小説ジャンルとしての海外SFに興味がなくとも、コニー・ウィリスという作家の名前を聞いたことがある、という方は多いのではないでしょうか。

長編・短編を問わず、作品を発表するたびに国内外のSF文学賞をかっさらい、「アメリカSF界の女王」とも呼ばれる彼女の代表作の一つが、今回オススメする『航路』です。

主人公のジョアンナは、臨死体験(NDE)の研究を行っている臨床心理学者。
彼女はある日、臨死体験者への聞きとり調査のために通っているデンバーの総合病院で、神経内科医のリチャードと出会い、ある研究への協力を持ちかけられます。

それは、投薬によって擬似的な臨死体験を発生させ、脳の状態をリアルタイムでスキャンすることで、そのメカニズムを科学的に解明しようというプロジェクト。

共通の目的のために手を組んだ二人ですが、肝心の被験者が決まらず、結果としてジョアンナ自身が実験台を買って出ることになります。
初めて味わう臨死体験の中で、彼女が目にした衝撃的な光景とは――?
 
 
この作品の最大の魅力は、読者の興味を物語の中へと引き込んでいく、その手練手管の巧みさにあります。

ストーリーが展開していくなかで立ち上がってくる不可解な謎と、それを解明しようと作中世界を必死に駆け回る主人公たちの描写は、さながら良質のミステリ小説のよう。

一方で、心臓に病を抱えて入院している災害マニア(!)の少女メイジーや、臨死体験を死後の世界からのメッセージだと訴えるオカルティストのドクター・マンドレイクなど、一癖も二癖もある登場人物たちのやり取りは、まるでコメディ映画の台詞回しのように、思わずクスッとさせられるユーモアに満ちています。

テーマにも描写にも難解な部分はなく、最後には長編のボリュームに見合うだけの驚きと感動もしっかりと用意されているという、ウィリス作品の真骨頂が存分に楽しめる一作です。
 
 

なかなか外へと出かけるのが難しい状況が続いていますが、そんなときこそ、少し長めの本をじっくりと味読するチャンスですよね。
まだ読んでいない方はぜひ、この『航路』を入口に、傑作揃いのコニー・ウィリス作品に手を付けてみてはいかがでしょうか。

文/ 厚木店・T.O

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