612[1]『ギケイキ 千年の流転/町田康/河出書房新社 河出文庫/740円+税外部リンク 
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職業柄、お薦めの作家を教えてくださいと聞かれることが多いのですが、
その度に、人に薦めても良いのだろうか?と逡巡してしまう作家、町田康。

凝ったストーリーも無く、独特の文体(そのグルーヴ感が好きなのですが……)。
人によっては、なんだこのふざけた小説は。くだらない! と思われるでしょう。

が、この作品は皆さんご存知の源義経を描いた軍記物語の現代語訳。
ストーリーがきちんとあるので、とっつきやすい、お薦めしやすい。
が、しかしそこは町田康。
 

義経本人が現代の視点から自分の人生を振り返るという設定。
もうやりたい放題です。

例えば、初めての家来になる伊勢三郎義盛の屋敷でのシーン。

『義経記』本文では

「御曹司、あはれ然るべき仏神のお恵かな。憎げなる事をだにも言はば、
由々しき大事は出来んと思召しける。」

ってだけのところを

「(略~)
私はそもそも美人の女が男に気を遣っていることにむかついていたので、
男が、バーカバーカバーカ、とか言えば、勿論、むかついただろうが、
男が、鶴、とか、インセンティヴ、とか言ったとしても、
誰がツル禿じゃ、ぼけぇ。とか、英語言うな、アホンダラ。
とか言って斬りかかっていただろう。
(略~)
それにしてもあのとき男が無言で立ち去ってくれたのは
実によかったことで、もしかしたら、神仏、みたいな超越的な存在が私を守ってくれたのかもしれない。
ありがたいことだ。よかったことだ。」

ってなかんじ。

1行目の長いセンテンス後の、句点、読点の乱打、ワードのチョイスのくだらなさ、このリズムの心地よさ。

元ネタにはストーリーがちゃんとあるので、この文体のグルーヴ感を心置きなく楽しめます。
他の作品を読んで「?」と思った方はこちらをお薦めします。

(まだ2巻目までしか出版されていないので、それはそれでモヤモヤは残るかもしれませんが……)


文/ アトレ恵比寿店・H・T


第2巻は2020/7現在
\ 単行本です /

『ギケイキ2
奈落への飛翔
町田康/河出書房新社/1,700円+税
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