過去の「本の泉」

『桃を煮るひと』暮らしにすーっと馴染んでいくようなエッセイ集

488『桃を煮るひと』/くどうれいん/ミシマ社/1,760円(税込)外部リンク 
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くどうれいんさんの食エッセイを読んでいると、何時間もお茶をしながら、「そういえばさあ」なんて何気なく友達とおしゃべりしている感覚になる。

美食ではなく、生活の中の食について書かれていて、無性にカリカリ梅が食べたくなる衝動や祖母の家の畑でとれる野菜の記憶、なぜか桃を煮ていると、家族や同居人が「桃を煮ていますね」と声をかけてくること。
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『フランケンシュタイン』人の存在や善悪、心についてなど、考えたいことがたくさん生まれ出る

651『フランケンシュタイン』/メアリ・シェリー/新潮社/825円(税込)外部リンク 
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1797年生まれ、詩人に道ならぬ恋をして結婚した19歳女性、第二子誕生後の手遊びで書き始めた小説。
誰もが知っているフランケンシュタインの物語をこんな若い女性が書いたいたなんて!

こんなにも先が気になる牽引力のある強い物語がこんなに昔に書かれてていたなんて!これには驚かされたけれど、華麗な文章も、ちょっと待ってよと思う部分も、著者の生まれた時代や描いた年齢、数奇な人生を思うと自然に受け入れられる。
自然や人の描き方が美しく、登場人物の話し言葉も長い手紙も豊かな感情が伝わってくる。
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『街とその不確かな壁』すばらしさをすごく描き切ってくれたような気がして、読み終わってうっとりしている

437『街とその不確かな壁』/村上春樹/新潮社/2,970円(税込)外部リンク 
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『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』は読んだそばから忘れてしまう特別な小説で、ずっとその理由にうまく説明がつけられなかった。

ただ言葉のリズムを楽しみに行っている、私にとって心地よい音楽みたいな小説なんだと思い、繰り返し読んできた。

今回これを読んで、『百年の孤独』や『愛と精霊の家』『ホテル・ニューハンプシャー』を読んだ時も同じ種類の音楽を聴いていたんだと分かった。魔術的なのだ。
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『苦界浄土』 思念を小説という形に変えて差し出してくれたもの

815『苦界浄土』/石牟礼道子/講談社/836円(税込)外部リンク 
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今まで読んだ何にも似ていなかった。
ノンフィクションではないことがまず分かった。
一人の人間に流れ込み、自らも掴み取りにいった景色を、思念を、小説という形に変えて、差し出してくれたもの。

だから景色を、思念を受け取った。
賜物、という言葉が浮かぶ。
本当にはわからないもの、「見た」ものにしかわからないこと、がたくさんある。
自分がいかに何も知らないかを思い、愕然とする。
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『この世の喜びよ』 過去と出会い直し、迷子になってみてください

683『この世の喜びよ』/井戸川射子/講談社/1,650円(税込)外部リンク 
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人は誰も生きない、このように生きたかったというふうには。

どう生きようと、このように生きた、誰だろうと、そうとしか言えないのだ

長田弘さんの詩にそうあって、本当にそうだなあと思った。
帯に「思い出すことは世界と出会い直すこと」とあって、それも本当だなあ、と思った。
過去と出会い直すのはいいことばかりじゃない。
こんなふうに生きてしまった、そんなつもりはなかった、選べなかった、出来なかった、考えなしだった、しかたなかった、、、、
なかった、がいっぱい。
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『死ぬまで生きる日記』さながら著者と一緒にカウンセリングを受けているような気持ちになる

009『死ぬまで生きる日記』/土門蘭/いきのびるブックス/2,090円(税込)外部リンク 
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とても良い本に出合った。
ここまで正直に自分のことを客観視しながら言葉をつづった文章に出会えることはなかなかない。
子どものころから「死にたい」という願望が強いが、かといって自傷行為をするわけではない。
「楽しい」「うれしい」とかは日々味わえるのに、ときどき強烈な「死にたい」という気持ちに覆わ動けなくなる。
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『彗星交差点』ほっこりとする日常が心を和ませてくれます

571『彗星交差点』/穂村弘/筑摩書房/1,540円(税込)外部リンク 
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穂村さんの文章はなぜこんなにくすりとさせられるんだろう。

日々の何気ない風景や言葉から、え?それちょっとへんじゃない?と疑問を投げかける。
誰かが言い間違いそうな言葉、何気ない夫婦の会話。

なんてこともない日常は詩よりも詩的でコントよりもコミカルである。
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