『夫婦茶碗』/町田康/新潮文庫/451円(5%税込)
淡白な妻と神経過敏な夫は金銭地獄の中、冷蔵庫内の配置を巡って口論し、タンポポを食って飢えを凌ぐ。就職に向かって一念発起するも長くは続かない。
いよいよ追い込まれた主人公は、メルヘン小説を執筆して一発逆転を狙っていた……。
淡白な妻と神経過敏な夫は金銭地獄の中、冷蔵庫内の配置を巡って口論し、タンポポを食って飢えを凌ぐ。就職に向かって一念発起するも長くは続かない。
いよいよ追い込まれた主人公は、メルヘン小説を執筆して一発逆転を狙っていた……。
主人公の中で、一貫した論理の元に起こす行動がひどく滑稽に映る。
その様を言葉遊びを交えながらコロコロと表情の変わる文章で上手く演出して、シニカルな笑いを誘う。
本書を読んでいる時、社会の底辺で喘ぐキャラクターを戯画化しながらも忘れた頃につと顔を出す、人の断絶と社会の闇にニヤニヤ笑いが凍りついたのをよく憶えています。
ニヒリズム的な虚無の中に、それを払拭してしまうかのような錯乱と笑いがビッシリと詰まっている本作品は、ある意味で非常に温かく感じました。
上述した「夫婦茶碗」以外に、ドラッグと女に翻弄される短編「人間の屑」も併録。
パンクス、俳優、小説家と様々な顔をもった町田康氏は、一見多才に映りながらも自らを胡散臭い人間と称している。
そこに、町田文学の真髄があるのでないかと、思わずにはいられないのでした。
文/ 錦糸町テルミナ店・MY
その様を言葉遊びを交えながらコロコロと表情の変わる文章で上手く演出して、シニカルな笑いを誘う。
本書を読んでいる時、社会の底辺で喘ぐキャラクターを戯画化しながらも忘れた頃につと顔を出す、人の断絶と社会の闇にニヤニヤ笑いが凍りついたのをよく憶えています。
ニヒリズム的な虚無の中に、それを払拭してしまうかのような錯乱と笑いがビッシリと詰まっている本作品は、ある意味で非常に温かく感じました。
上述した「夫婦茶碗」以外に、ドラッグと女に翻弄される短編「人間の屑」も併録。
パンクス、俳優、小説家と様々な顔をもった町田康氏は、一見多才に映りながらも自らを胡散臭い人間と称している。
そこに、町田文学の真髄があるのでないかと、思わずにはいられないのでした。
文/ 錦糸町テルミナ店・MY