581『北天の馬たち』/貫井徳郎/角川書店/1,575円(5%税込)詳細
貫井徳郎の書くミステリが、好きだ。男イヤミスの代表というか、暗くて、負の連鎖がどこまでも続いて、それなのに読み出したら止まらない。微妙なドロドロ感と後を引くストーリー展開が、妙な好奇心を刺激する。小説の中の不幸なのに、心をえぐられる時もあるが、とにかく結末が気になって仕方がない。
が、今回の作品は、今までと一味も二味も違う。探偵物語の面白さ、人と人と絆の素晴らしさ、ちりばめられた伏線が最後にはきちんとつながった時、感動のラストを迎える。大切に想う人を、何としてでも守り抜こうとする男達の物語である。
サブスタッフのEちゃんに言わせれば、「愛なんですよ。それも究極の。」(ちなみに彼女は、読んだ後、しばらく放心状態で涙ぐんでいたそうです)。
舞台は、横浜の馬車道。喫茶店「ペガサス」のオーナー、毅志。亡き父の代わりに店を継ぎ、母親と二人暮しをしている。その「ぺガサス」のあるビルの2階に〈S&R探偵事務所〉を開業する皆藤と山南。このままこの小さな喫茶店のオーナーとして一生を終えるのかと、思うところのあった毅志の前に現れた探偵屋の二人。そして、彼らに会いにくる元ファッションモデルでセレブの未亡人淑子と、彼女の姪っ子である芽衣香。窮屈な世界からの息抜きと二人への憧れから、毅志は、皆藤と山南の手伝いを申し出ます。やがて、探偵事務所に入る案件を片付けているうちに、毅志は、何か違和感を感じ始めます。そしてそれは・・・・。

血のつながりはなくても、人と人は家族以上の関係になれるのです。強い強い絆でつながれていくのです。そういう関係は、本当にいいなと思いながら、こういうお話を紡ぐ貫井徳郎も、きっと素晴らしい方なのではと想像してみました。
作家生活20周年を記念した集大成。傑作である。

秋の夜空を眺めながら、ふとぺガスス座を探してみる。北天の馬たちに想いを馳せながら、上質の貫井ミステリと入れたての珈琲を。そんなひとときをお客様にご提案してみようと思いました。

文/ 厚木店・AS

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