


私の大好きな作家・西加奈子の描く作品の登場人物は、どこか個性的で憎めない魅力溢れる人間が多い。
待望の新刊『舞台』の主人公・葉太は、病気で亡くした父親(作家)の遺産で単身ニューヨークへ旅立つ。それはただ、セントラルパークで自分の大好きな作家の本をゆっくりと読んでみたいからという単純な理由からだ。
しかし、その目的を果たそうとした矢先に持っていたバッグをひったくられ、所持金やパスポートやスーツケースの鍵を盗まれてしまう・・・。
羞恥心のかたまりのような性格の葉太が、その後とった行動がまず可笑しい。すぐに領事館へ助けを求めず、滞在期間をポケットに入っていた僅かなお金だけで過ごすことに! 何故なら領事館へ助けを求める自分が恥ずかしいから。
常に他人の目を気にし過ぎる余り、物事が思わぬ方向へ行ってしまい、しなくていい苦労ばかりする葉太を最初は「馬鹿だ」と思うのだが、いつの間にかこんな不器用な生き方しか出来ない葉太に共感している自分がいる。
最後に日本へ帰る際、葉太は「自分のなりたい自分」「皆に望まれる自分」を全力で演じている自分がいることに気付き、そしてそれに苦しんでいる自分に改めて気付く。その苦しみは自分だけのもので自分にしか分からないのだと悟る。
立っている「舞台」は人それぞれ違うが、誰もが自分自身の苦しみを抱えながら、その「舞台」に必死に立ち続けているのだ。そう思ったら最後は泣けた。
文/
新百合ヶ丘エルミロード店・TS
常に他人の目を気にし過ぎる余り、物事が思わぬ方向へ行ってしまい、しなくていい苦労ばかりする葉太を最初は「馬鹿だ」と思うのだが、いつの間にかこんな不器用な生き方しか出来ない葉太に共感している自分がいる。
最後に日本へ帰る際、葉太は「自分のなりたい自分」「皆に望まれる自分」を全力で演じている自分がいることに気付き、そしてそれに苦しんでいる自分に改めて気付く。その苦しみは自分だけのもので自分にしか分からないのだと悟る。
立っている「舞台」は人それぞれ違うが、誰もが自分自身の苦しみを抱えながら、その「舞台」に必死に立ち続けているのだ。そう思ったら最後は泣けた。
文/

