377『日本一の女』/斉木香津/小学館/1,000円+税外部リンク 
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少し前の映画で、デミ・ムーアがとんでもない悪女を演じる『デイスクロジャー』という作品があり、最後の場面でデミ扮する女の悪事が明らかになるのですが、とても印象的だったのは、ズルい事をしたはずなのに、反省もせずに、「だから、何なの?」と開き直るデミの強い女っぷり。とめどもなく憧れました。
そして、この本! サダです。
会社の人間関係にも、ディンクスでうまくやってきたはずの夫との間にも疲れ始めた菜穂子が、曽祖母の法要に出席するところから始まります。そして、なんだか親族中の鼻つまみ者だったような曽祖母の思い話を住職から聞き出します。
32年前の7月9日に曽祖母、匹田サダは亡くなり、その翌日に菜穂子は生まれました。なんだか、菜穂子は自分が曽祖母の生まれ変わりのように感じていたのですが、決まってその話になると親族がこぞってイヤな顔をします。果たして、曽祖母サダはそんなに変な人だったのでしょうか?

サダは、昭和2年に20歳で田舎の農家に嫁ぎます。跡継ぎである兄、美人で周りからちやほやされていた妹、そんな家族の中でサル顔のサダは、自分の居場所を求めて、まだ会ったこともなかった正一のところへやってきます。
お姑さんからも、「私はなあ、あんたなんかに嫁に来てもらいたくなかったんで」と言われ、また実家からも鼻つまみだったサダは、「金剛様がついちょるんじゃ」と言って自ら奮い立ち、持たせてもらえなかった嫁入り道具代わりに実家に借金を申し込んで精米所を始め成功したり、次々と男の子を産み、なんと九男の母親になります。

ともかく、パワフルで我が道を行く女なのです。決して他人に迎合するわけでもなく、ベッタリと優しいわけでもない。でもこの強さ、とても惹かれます。
戦前、戦中と決して豊かでなかった時代、一人の女性が農村の片隅でどうやって生き抜いていったか? こんな生き方、ちょっとなぁと思われる方もいらっしゃるかもしれません。また、なんだかどんどん“いじわるばあさん”路線になっているのでは?と思われるかもしれません。
けれども、混迷した世の中でもきちんと自分なりの信念を持ち、ブレずに生きれる女性は、どんな世の中でも、私はかっこいいなあと憧れます。

そんな、型破りなサダの生き方に触れた時、なんだか元気が出てくるのです。ありのままに生きたいように生きられたら、人はもっと自由に幸せになれる、そんな気がしてくるのです。
回りに気を使いすぎて、届かなかった誠意を嘆くよりも、自分らしく生きたいように生きられたら…そう思わずにはいられません。
なんだか落ち込んだ日は、サダさんのこの豪快な女の一生を読んで、たくさん元気をもらおうと思います。

文/ 厚木店・AS
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