『サラバ!』上巻/西加奈子/小学館/1,600円+税
めでたくも直木賞を受賞し、今まさに世の中にこの本についての書評がたくさん出ているとは思いますが、賞をとる前からオススメしようと思っていたので許して下さい。
好きです、西加奈子。
昔からこの作家が書く人間、主人公にとても共感します。
サラバ!にはなんと、わたくしと一文字違いの名前の人物まで出てきたので、もう勝手に運命とか縁的なものを感じています。許して下さい。
コンプレックスがあって、生きにくいなと思っていて、でもそれが自分の卑屈さや怠け癖や臆病すぎるせいだということも分かっているので、誰のせいにもしにくい、だからほんのり生きにくい。そんな自分キライだな、自信なんて持てないな、という感覚、ありませんか?
ちらっとでも覚えがあったら、ひとつ騙されたと思って読んでみて下さい。
上巻は、異国の文化と「姉」のとんでもなさ、キラキラして見える世界の描写に心躍ります。
どことなく、ジュブナイル、ちょっとファンタジー。でも見え隠れする、というかずっと顔を覗かせている不安の影。
いろいろひっくるめて、主人公の「僕」が成長するさまを楽しめます。
でも、下巻!
わたくしが号泣し胸をわしづかまれたのは下巻です。
号泣と言っても、悲しい出来事が~うんぬんの涙ではない。
感涙。こころが、とても動かされたから。もっと言うと、その見つけたもの、その一文に、救われた気持ちになったから。
これが物語の力だよ!と思いました。
これが本の力だよ!と。
たくさんのエピソード、時間の流れ、考え方の変化、受け取り方の変化、生きていくうえでどうにもならないこと。大人になるにつれキラキラしていた世界がどんより背中に降りかかってくるようになること。人間関係。
どうにもならん、ほんまにもういや。
文/ ミウィ橋本店・TY
