『つげ義春 夢と旅の世界』/つげ義春・山下裕二・戌井昭人・東村アキコ/新潮社 とんぼの本/1,800円+税
1960年代後半から70年代にかけて『月刊漫画ガロ』に作品を発表し、いまだに新しいファンを生み続けている漫画家つげ義春の世界を、本書は「夢」と「旅」という二つのテーマからアプローチしています。
「夢」では、漫画史に残る問題作といわれる『ねじ式』の原画を写真で紹介し、今まで読んだことのある方も、その原稿の生々しさに思わず引き込まれてしまうことでしょう。また、夢と創作について、あまり公の場に姿を現さないご本人のロングインタビューも収載されていて、大変興味深いです。
「旅」では、つげ氏の旅人時代ともいわれる1960年代後半からの約10年間に撮影された旅写真とともに『紅い花』、『ゲンセンカン主人』の原画を写真で紹介しています。これらも、息づくほどのリアルさにじっくりと見入ってしまうほどです。カメラ蒐集家でもあったつげ氏が撮影した、失われゆく当時の風景をとらえた写真も大変貴重です。
ファンならずとも、すべての漫画読者に手に取っていただきたい一冊です。
文/ 大和店・MY
