001『山岳遭難の教訓』/羽根田治/山と渓谷社 ヤマケイ新書/800円+税外部リンク 
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ノウハウや対処法ではなく、色々な山岳遭難の事例を取り上げて考察した書籍である。
年々盛んになる登山ブームに比例して、山岳遭難は増加しているように思えるが、この本を一読して思うことは、昔から遭難が起こる場所はあまり変わらないなあ、ということである。
八ヶ岳の阿弥陀岳然り、白馬岳然り。遭難事故が多いよね、という場所で相変わらず遭難は起こっており、個々の事例の事故要因や条件に差異はあるにせよ、「多くの登山者はそれを自分にも起こりうる切実な問題としてとらえることができない」のだろう。
私も山に登るが、果たしてどれだけ切実に遭難を身近に感じているか。
ほとんどの登山者は、自ら遭難しようと思って登ったりはしない。
天気図とにらめっこをして自分が行こうとする山域の天候が良好な日に設定し、装備を整え、身体を良好な状態に引き上げて山に赴く。それでも天候の急変はありえるし、突然の身体の失調も考えられる。そうなったときにどう対処するのか(エスケープルートの設定やビバークの装備等)まで含めて準備をして登山計画書を警察に提出する。

それでも遭難の可能性は払拭できない。これまでの登山歴の中で、道迷いはあったし、小さな滑落もあった。
では、遭難の可能性を完全になくすことはできないのか。ひとつだけ方法がある。
それは、山に行かないことだ。
しかし、これは乱暴な結論であることは論を待たない。
山に登ることに素晴らしさを見出したからこそ登るのであり、だからこそ可能な限り遭難の可能性を排除して登山に挑戦するのだ。

「個人だろうとガイドだろうとツアーだろうと、山で遊んでいるかぎり事故に遭う可能性は否定できない」かぎり、自分の力量を見定め、きちんと登山計画書を提出し、装備を整えて、いくらでもシミュレーションをすべきだろう。
おそらく私は、ただ山に登るためだけに登るのではない。
自分の感動を誰かと分かち合いたくて、登っているのだ。
無事に登り、無事に下山する。
その当たり前の喜びを分かち合う上で、本書は一助になるはずである。
冬の天狗岳に登る途中で妻に電話をしながら、そう考えた。

文/ アトレ川崎店・SF
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