
今回は、ボストン美術館と東京藝術大学大学美術館が初めてコラボして開かれる「ボストン美術館×東京藝術大学 ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」(2015/4/4~5/17)
の記念開催。会場となった上野公園の奥地、根津エリアに属する東京藝術大学第2講義室では、定員を上回るたくさんの方々が集い、明治期の美術史を紐解こうと大いに盛り上がっています。
ビブリオバトル in 東京藝術大学 | |
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開催日 | 2015/4/12(日) |
会場 | 東京藝術大学 上野キャンパス |
概要 | 第1ゲーム/第2ゲーム/古田先生の見どころ解説 |
本のテーマ | ①私だけが知っている 明治・ニッポン ②あなたの知らない異国の美 |
第1ゲームでは、美術展監修を務める東京藝術大学大学美術館古田亮准教授もバトルに参戦、こちらの大学の前身となる東京美術学校創設に携わり近代美術の開拓者といわれた岡倉天心著『東洋の理想』をご紹介されました。
岡倉天心の生まれは横浜。1859年に開港した横浜は、外国人居留地が設けられ、西洋美術のみならず鉄道やガス灯など様々な西洋文化が流入し「日本はじめて物語」を数多くもつ土地です。
そんな異国情緒漂う横浜港の風景を描いた歌川広重の浮世絵作品もダブル・インパクト展では見ることができます。実はこの時代の代表的な浮世絵師はこぞって横浜を舞台とする作品を描いているんです。
それがこちら→『横浜浮世絵』(横田洋一/有隣堂)
ご興味ある方はぜひどうぞ。
というわけで(笑)二重三重にも今回のコラボレーションのご縁の深さに感じ入る次第です。
それではそろそろ第2ゲームが始まります。
ビブリオバトルを通してさらに美術展が奥深くなること請け合い!
第2部では古田先生に再びご登場頂き、「ダブル・インパクト展を10倍楽しむポイント」ミニ解説もありますのでどうぞお見逃しなく!
第2ゲーム テーマ「あなたの知らない異国の美」
毎度お馴染みのクジ引きで一番を引き当てたのは見目麗しい和装の雨宮さんです。
「ジョージア・オキーフは98才で亡くなった女性画家。40才のときにニューヨークからニューメキシコに移り住んだ家の中を撮影した写真集です。特に好きなのが石や骨をモチーフにしたもの。84才で視力を失い92才で家の撮影を許可したので、オキーフ自身も見えていない世界を見ることができるのも楽しんでもらいたいです」

かのオキーフ氏来日時に菊を見たいと言われていたそうで、この日のお着物は白菊。
帯留めは着物ビブリオバトルのオリジナルキャラ、ビブリオバト子ちゃん!

続いて田中さん。第2ゲーム紅一点ならぬ唯一の男性バトラーです。
「タヒチの伝統的なお祭りの本を紹介します。Heiva I TAHITIは130年に渡って続いている祭典で、メインはタヒチアンダンス。そしてカヌー競争やココナッツわり、やり投げに椰子の木登りなどが行われます。巻末に何秒で木に登ったかといった記録もあって別の年のも見るとまた同じ人が出てると分かったり微笑ましい」
ボストン美術館といえばゴーギャン、ゴーギャンといえば明治末期描かれたタヒチの作品というインスピレーションの1冊。
この絵画には“われわれはどこからきたのか、われわれは何者なのか”の言葉も残され、第1ゲームで紹介された岡倉天心曰く「アジアはひとつ」と何だか通ずるものを感じますね。
3人目の登壇者は森部さん、今年2月開催の「本屋さんで買った掘り出し本」バトルのチャンプです。
「短い文字数で最大のイマジネーションが膨らむよう作られる漢詩。例えば横山大観の“屈原”。屈原は中国楚の時代の詩人。東京美術学校を岡倉天心が退官した際に描かれた作品ですが屈原の生涯を知ると絵も違って見えてきます。岡倉先生は何故退職したのか?口には出せない恋とか思いが漢詩に託されたり元ネタが分かり面白いです」
漢詩は苦手という人にも再入門書としてお薦めと語る森部さん。明治の美術がお好きな方には漢文・漢詩はかじっておいたほうが楽しめるということですよ。
森部さんがお気に入りの作品は荘子の「胡蝶之夢」。
第2ゲーム最後のバトラーは山口さん。それでは有終の美を飾って頂きましょう。
「タイトルがセンセーショナルでドキッとして買っちゃった本。道行く女性を男性がさらって、女性が認めるまで説得をして結婚するという日本では見られない慣習。キルギスでは合法的な駆け落ちに使われることもあり、文化を逆手にとって自分達の愛を貫く姿に美しさを感じました」
第2ゲームのテーマから、直球の美術本か、変化球な本か悩んだ末、変化球の本を選んだという山口さん。2015年の日本でも異国から衝撃を受けることはまだまだある!とインパクト大な1冊をご紹介です。
さあ、第2ゲームの4冊の本が出揃いました。
この4冊だけでも世界各地をめぐる知る人ぞ知る異国の美が紹介されましたね。全員で投票に入ります。選ぶ基準は「どの本が一番読みたくなったか」。バトラーの皆さんもご自身の紹介した本以外で1冊に投票して頂きます。後ろを向いて……ドキドキです!
果たして結果は…?!
第2ゲームのチャンプ本は、森部さんご紹介、
『絵でよむ漢文 新版』に決定しましたー!!!おめでとうございます!ダブル・インパクト展を観る前、観た後、あらためて当事者たちの物語を知り、その作品に込められた思いと芸術性とを噛み締めてみましょう。
森部さんにも東京藝術大学大学美術館オリジナルお菓子の記念品が贈られます。
こちらも美味しく味わってくださいね。
そして素晴らしい本をご紹介してくださったバトラーの皆さんにも大きな拍手が贈られます。
ありがとうございました!
興奮冷めやらぬ会場、その勢いのまま第2部はダブル・インパクト展監修の古田准教授から「ダブル・インパクト展を10倍楽しむポイント」解説が語られました。
美術展では、黒船来航から開国以来の明治期に訪れた西洋人がニッポンの美術品・工芸品から受けた衝撃と、日本人が出逢った新しい概念の西洋美術から受けた衝撃、このふたつのコレクションがストーリーをもって章立てで展示され、「日本の近代美術とはいかにして形作られたのか?いかなる葛藤があったのか?」を問うています。その答えは、観る者の判断や感じ方、人それぞれでいいと先生は語ります。
また、ダブル・インパクト展は会期を分けて名古屋ボストン美術館でも開催されます(2015/6/6~8/30)。
東京藝術大学大学美術館開催のポスターは大迫力の“おじさん”二人ですが、名古屋ボストン美術館のポスターは、たおやかで優しげなふたりの女性。
こちらも美術展が与えるインパクトが異なり違った一面を発見できそうな予感。
「ですから、皆さんひとりひとりの楽しみ方で観て頂ければいいのであって、そうするとダブル・インパクト展は10倍どころか観る人の数ごとに、20倍、30倍にも面白くなると思いますよ」
古田先生、お忙しいところ本当にありがとうございました!先生の気さくで魅力あふれるお話、ダブル・インパクト展がもう気になって仕方ないですね!早く観に行かなければ!
一度ご覧になった方も二度三度訪れるごとに新しい感動を得られると思いますよ。
東京藝術大学大学美術館「ボストン美術館×東京藝術大学 ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」は2015/5/17(日)まで好評開催中!
★先生が手がける次なる美術展はこちら!こちらも物凄く気になります!
「うらめしや~、冥途のみやげ」展 ―全生庵・三遊亭圓朝 幽霊画コレクションを中心に―
(2015/7/22~9/13 東京藝術大学大学美術館)
今回は、初めての美術展とのコラボとなりましたがいかがでしたか?
美術展もビブリオバトルも何倍にも楽しんで頂けましたら幸いです。
ご参加くださいました皆様、ありがとうございました!
最後になりましたが、開催にあたり準備段階から当日まで多岐に渡りご支援、ご協力を賜りました東京藝術大学様、日本経済新聞社様、hilo Press(ヒロプレス)様に心より御礼を申し上げます。
次回もお楽しみに。どうぞよろしくお願いいたします!
文/ビブリオバトルプロジェクトチーム 市川
バトラーさんの実際の発表をYouTubeでご覧いただけます。
こちらの再生リストでどうぞ!
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