426『ウェストンと歩く日本アルプス ―古き絵葉書より―』/上田剛/里文出版/2,000円+税外部リンク 
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ウォルター・ウェストンは明治21年から大正4年にかけて計3回来日し、日本アルプスを中心にして、数々の日本の山を登った登山家です。そして当時山が修行や信仰の対象か、狩猟や採集などの生活の場としてしか考えられていなかったのに対して、山への敬意を忘れないことと同時に、山岳美を追求し、登ること自体を楽しむという考え方を日本人にもたらした先駆者でもありました。
もともとはイギリスの宣教師であり、来日の目的も布教活動のためでした。だが日本の山に魅せられた彼は外国人でありながら、地元の山案内人とともにいくつもの山をめざすという行動をすることによって、日本人に山岳スポーツの精神を根付かせていく中心人物の一人となっていったのです。
この本はそんな彼の日本での登山記録を、当時に発行されていた絵葉書や写真を中心として紹介するといった少々変わった体裁をとっています。
ただそれにより当時の登山に対する考え方や雰囲気がより鮮明に感じ取れる気がしています。

例えば同じ穂高連峰を描いた絵葉書でも明治・大正の時代のものと昭和の頃のを比べると、山自体はあまり変化しませんが、背景に移っている自然や人・建物・表情等には平和な時代と戦争という暗い過去を背負った時代との差が明確に浮き出ています。
また当時の山装備や服装、町や家・駅といった風景も多く描かれていて楽しく、何かノスタルジックな気分になったりもします。

その後彼に触れた山案内人や地元の人々は、後に新しい登山道や山小屋、登山に適した宿や交通網などの登山環境をつくっていくことになります。
そしてそれは日本山岳会の設立という結果を生むことになるのです。

上高地を歩いたことがある方なら、ウォルター・ウェストンの碑を見たことがあると思いますが、それは日本の近代登山に対していかに影響の強かった外国人であったかを物語っています。
山好きの方や歴史好きの方にお薦めしたい本です。

文/ センター南駅店・TO
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