
9月1日は防災の日。海に囲まれた火山列島の日本において、四季折々の豊かな恵みを享受できる一方、いつ何時自然災害に見舞われるかは決して他人事ではありません。
日頃から防災用品を備えるとともに、家族や職場、地域の中でどのように判断し行動するか話し合いの時間を持つことが大切です。
そのきっかけになればと、ビブリオバトル in 有隣堂でも防災週間にちなんでスペシャル企画を開催しました!
『被災地デイズ』のジレンマから考える~正解のない問い~
矢守克也×伊藤剛×新藤祐一スペシャルトーク!
<第35回>ビブリオバトル in 有隣堂 | |
---|---|
開催日 | 2015/9/6(日) |
会場 | 伊勢佐木町本店別館 |
内容 | 第1部…ビブリオバトル(本のテーマ: ジレンマ ~正解のない問い~) 第2部…トークセッション |
実はこのスペシャル企画にはビブリオバトルならではのエピソードゼロがあります。

その前半「炎のグランドチャンプバトル」でチャンプ本の中のチャンプ本、もっとも読みたい本として選ばれたのが『被災地デイズ』でした。
このことで出版元の弘文堂さんとご縁がつながり、半年後のこの9月、あらためて『被災地デイズ』にフォーカスし、制作に携わった方々とグランドチャンプバトラーの方をゲストにお招きするに至ったわけでございます。
この本をご紹介くださったグランドチャンプバトラーさんに感謝!!

それではビブリオバトルとトークセッションの2部構成で開催された当日の模様をお届け致します。
→YouTubeで動画をご覧頂けます
第1部 ビブリオバトル テーマ「ジレンマ ~正解のない問い~」
『被災地デイズ』は災害現場で直面する様々なジレンマを問う本です。アレかコレか? あちらを立てればこちらが立たず。ビブリオバトルからもいろいろと考えてみましょう。

今回はこちらの5人のバトラーさんです。どんなジレンマ本が紹介されるでしょうか?!


極限状態の宇宙船の中でくだされた決断とは?!
自然の法則に従えば余計な因数を排除するしかない、しかしそこに感情が立ちはだかるジレンマ。
SF小説の定番「方程式もの」の原点となる作品から別の解を考えてみませんか?


「正しさ」は時と条件によって変わるもの。いつもどこかで誰かが悩んでる。
大正から平成まで続いている読売新聞のお悩み相談コーナー。悩みもすごいが回答もすごい!


多数を助けるためにひとりを殺すのか? 結論はいろいろなパラメーターによって変わります。
言語学、心理学、神経科学など様々な分野の考察を集めた本。
実際の場面でも遭遇する問題として思考実験をすることは大切ですよね。


この本にはジレンマがふたつ。
作者は尋常でない虫嫌い。その恐怖心が強いほどに惹かれ、畏怖と美しさへと転化される。怖いけど美しい。恐怖と愛情があってこその作品。
さてもうひとつのジレンマとは?


最近就職して「アレ?」って思ったこと、それは休日にやることないってこと(笑)。
僕たちは退屈とどう付き合えば良いのか? 自分のやりたいことは何なのか?
偉大な哲学者たちの言をもってしても決断できない若者のジレンマ。

5人による5冊の本のご紹介でした。この中から一番読んでみたくなった本に全員で投票です!
結果は……?!

1票差が続く僅差の結果、チャンプ本に選ばれたのは
『太った男を殺しますか? 「トロリー問題」が教えてくれること』 でした!
Yさんおめでとうございます!

計算 vs 感情 という尽きない問い。この本から多くの気づきがあるかもしれません。
そして様々な角度からジレンマを語ってくださったバトラーの皆さん、ありがとうございました!

休憩をはさんで第2部はゲストの皆さんによるトークセッション。
第2部 トークセッション『被災地デイズ』から考える ~正解のない問い~
ゲストは、『被災地デイズ』(弘文堂)編著者の矢守克也先生(京都大学防災研究所教授)と伊藤剛さん(asobot代表)。そして『被災地デイズ』で2014ビブリオバトル in 有隣堂のグランドチャンプに輝いた新藤祐一さんをお迎えしました。

まずは2014グランドチャンプ新藤さんから『被災地デイズ』ビブリオバトルプレゼンアゲイン(笑)。
新藤さんご自身も宮城県での写真救済ボランティア活動「思い出サルベージ」に携わる中で、被災地とそうでない土地にいる人とのギャップを埋める本を探していてこの本に出逢ったとのこと。
そして矢守先生、伊藤さんからビブリオバトルをご観覧頂いたご感想が飛び出しました。
「落語みたい(笑)! 時間ぴったりにまとまるなんてすごいですね!」
「人柄がわかる! 話者の職業が気になってしかたない(笑)!」
「ア○ゾンの“閲覧履歴からのおすすめ”には絶対に出て来ない本に投票しました!」
と、さすがのおふたり、ビブリオバトルの本質をすでに見抜き、その魅力を堪能して頂けたようです!
さらには『被災地デイズ』の制作エピソードへとすすみます。
関西出身の矢守先生にとって阪神・淡路大震災の教訓は、自然対人間だけでなく、人間対人間の心理ゲームを考えないといけないということ。
そこで考案されたのが分かれ道を意味する「クロスロード」と名付けられたシュミレーションゲームだったのです。
そんな折、弘文堂さんから、今の時代に課題を投げかけるような本『時代QUEST』というシリーズでasobot代表伊藤さんに企画が持ちかけられました。
偶然にもクロスロードゲームの体験者だった伊藤さんはぜひにと矢守先生へ協力依頼をし、ストーリーが出来上がっていくのでした。
この『被災地デイズ』では15:00に大地震が起きます。それまでカラーだった世界が以降はモノクロに変わってしまう、その構成の妙。
「実は、弘文堂の編集さんから印刷代の関係でカラーページは16ページだけだと言われていて(笑)。それで震災発生後の世界をモノクロにしました」
そんなウラ事情があったとは! クリエイターの腕の見せどころですね。
震災の後、72時間を生き残ったあと何が起こるのか?
三日後、一週間、一ヶ月、1年後……。
クロスロードの手法に時間軸を取り入れて復興に向かう中で多様な人が多様な状況で直面する「問い」が投げかけられます。
「東日本大震災のときの教訓は「想定外のことをどう想定内にして準備するのか?」。
クロスロードゲームは阪神・淡路大震災の事例をもとに制作されていますが、『被災地デイズ』では「東日本大震災のことも盛り込みたかった」と、伊藤さん。
さらには伊藤さんご自身が被災者となった、インドのネパール滞在中に発生した大地震の体験談を交えてお話はすすみます。
それぞれのご活動から得られた気づきや作品から発信したい思いが語られ、熱心に耳を傾ける皆さん……。
トークセッションの中で、矢守先生のクロスロードゲームを疑似体験もできました。
さらには、伊藤さんから、新藤さんからも「問い」が投げかけられ、会場の皆さんと一緒に考える時間となりました。
日常の中から「問い」を見つけ、考えること。
『被災地デイズ』は、正解ありきのマニュアル社会に投げかける問題集。
最後に矢守先生からひとこと、
「自助とは“自分だけが”助かるのではなく、“自分だけで助かる”ことができる人を増やし、“共助”へとつなげること」
ご多忙を極める皆様でしたが、遠方からはるばる駆けつけてくださった矢守先生、伊藤さん、新藤さん、そして今回の企画趣旨に快くご賛同くださり多大なるご支援を頂きました弘文堂編集ご担当者様に心より御礼申し上げます。今後の皆様のご活躍を応援してまいります!
また悪天候の中、足をお運びくださいましたたくさんの皆様も本当にありがとうございました!!
出演者紹介 | |
---|---|
矢守 克也 さん | (やもり かつや) 京都大学防災研究所教授、『被災地デイズ』(弘文堂)編著者。 |
伊藤 剛 さん | (いとう たけし) asobot 代表。NPO法人『シブヤ大学』設立。 『なぜ戦争は伝わりやすく 平和は伝わりにくいのか』(光文社)』 『被災地デイズ』(弘文堂)著者。 |
新藤 祐一 さん | (しんどう ゆういち) 「思い出サルベージ」副代表。Web制作会社経営。 2014ビブリオバトル in 有隣堂[炎] のグランドチャンプ |
文/ビブリオバトルプロジェクトチーム市川
当日の様子は動画でもご覧いただけます
▼バトラーさんの発表▼トークセッション
参加のご予約・バトラーご応募も承っております。お気軽に遊びに来てください!
▼ビブリオバトル in 有隣堂 公式Facebook
https://www.facebook.com/BibliobattleinYurindo
※Facebookでのご予約・お申し込みは、Facebookにログイン後、上記ページ内「イベント」から各回のイベントページで「参加」をクリック!
▼有隣堂ホームページ ビブリオバトルお知らせページ
https://www.yurindo.co.jp/storeguide/24993
メールでもご予約・お申し込みいただけます。
