750『戦場のコックたち』/深緑野分/東京創元社/1,900円+税外部リンク 
有隣堂の在庫を探す
かわいらしい装丁と、読み応え十分の本の厚さ、二段組みの熱量に魅かれて手に取った一冊でした。
一読して驚きました。日本人に、こんな小説が書けるんだ!と。
とにかく戦争の描写がリアル。
その上、舞台は1944年の戦争時代、合衆国のコック兵となったティムが主人公。

戦争の只中におこる事件、だけど大事件ではない、いわば「日常の謎」とでもいうべき事件を取り上げ、解決してゆく物語。
その中には、悲惨な戦争の姿もしっかり描かれており、時には胸が痛くえぐられるのだけれど、謎解きのストーリーがとても魅力的で、ぐんぐん読んでしまう。
なんていう新しい小説なんだろう、と嬉しくなった。

こんな風に命を賭しながら、戦争にむかった若者たちが現実にたくさんいたのだ、ということを思わせてくれる。死、友情、家族など彼らの苦悩に思いをはせ……私も同時代に生きていたら、と戦争について考えざるをえなかった。
日本を舞台にした戦争の物語では、きっとこんな軽妙な小説にはできないだろう。できたとしても軽妙さと「戦争の重み」をこんなに両立できるだろうか。

この一冊は、日常の謎を解く若者たちの姿と戦争の現実を物語の中で両立させた稀有な小説で、軽妙洒脱で非常に読みやすい。
そういう意味で、戦争を知らない世代、特に若い人たちに、戦争について考えさせてくれる貴重な一冊になるんじゃないかと思う。
そういったことを度外視しても、物語としてとても魅力的なのだけれど。

一読、登場人物たちが愛おしく、本当の仲間に思えてしまうこと請け合いです。

文/ テラスモール湘南店・N.J

----------

こちらもあわせてどうぞ!

>> 2015/12/21の記事でも『戦場のコックたち』をご紹介しています

>> 第154回 直木賞候補作にノミネートされています!

本の泉スタッフ (M)
・2021/3/31以前の記事……税別の商品価格
・2014/2/28以前の記事……5%税込の商品価格

を表示しています。
現在の税込価格はリンク先のHonyaClub・在庫検索などでご確認ください。
----------