


2016年、今年も様々な出来事があった。嬉しくおめでたいニュースは、もちろんたくさんあったが、それ以上に悲しくてつらいニュースの方が多くて、全てのあらゆる情報に対して目を瞑り、耳を塞ぎたくなってしまうこともあった。そして今現在も、世界のどこかで誰かが悲しみ、苦しい思いをしている・・・
ただただ悲しむことしかできない自分自身の無力さに絶望もした。
西加奈子さんの『i(アイ)』は、そんな自分の弱い心を救ってくれた。主人公のアイ(彼女の名前はワイルド曽田アイ)は、養子としてアメリカ人の父と日本人の母に育てられる。血の繋がりはなくとも、両親から沢山の愛情をもらっているが、自分が本当の子ではないことに、耐えられない思いを抱えていた。
いつまでも馴染めない日本の高校での数学の初めての授業で、先生が言った「この世界にアイは存在しません」という言葉が呪文のように、大人になってもずっとアイを苦しめていく。自分の存在意義に疑問を持ち続ける彼女の生き方は、読んでいてこちらがつらくなる。それでも、もがきながら生きていく中で、心から彼女を愛してくれる人たちに運命的に出会うのだ。
物語のラストで彼女が辿り着いた答えに、涙が溢れて止まらなかった。
タイトルである「アイ」とは、ワイルド曽田アイのアイであり、私という意味のiであり、愛情のアイであり、アイデンティティのアイなのだと思う。
2016年、文芸書で一番のおすすめです。ぜひ読んでみてください。
文/
藤沢店・TS
西加奈子さんの『i(アイ)』は、そんな自分の弱い心を救ってくれた。主人公のアイ(彼女の名前はワイルド曽田アイ)は、養子としてアメリカ人の父と日本人の母に育てられる。血の繋がりはなくとも、両親から沢山の愛情をもらっているが、自分が本当の子ではないことに、耐えられない思いを抱えていた。
いつまでも馴染めない日本の高校での数学の初めての授業で、先生が言った「この世界にアイは存在しません」という言葉が呪文のように、大人になってもずっとアイを苦しめていく。自分の存在意義に疑問を持ち続ける彼女の生き方は、読んでいてこちらがつらくなる。それでも、もがきながら生きていく中で、心から彼女を愛してくれる人たちに運命的に出会うのだ。
物語のラストで彼女が辿り着いた答えに、涙が溢れて止まらなかった。
タイトルである「アイ」とは、ワイルド曽田アイのアイであり、私という意味のiであり、愛情のアイであり、アイデンティティのアイなのだと思う。
2016年、文芸書で一番のおすすめです。ぜひ読んでみてください。
文/

