703『高熱隧道』/吉村昭/新潮社 新潮文庫/520円+税外部リンク 
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吉村昭没後10年というわけでもないのだが
この『高熱隧道』を読んでみた。

一体全体、何が「高熱」で「隧道」とは一体なんであるのかすらさっぱり分からないまま読み始めた。

吉村昭の書籍を読むとき、いつも思うことは作中に吉村氏が出てこないことである。
文中のセリフ以外の文章で作者が顔を出すこと、
出していると思われることはよくあることなのだが
吉村氏の書籍には吉村氏の顔が見当たらないのだ。
吉村氏のことだから一本の小説を書きあげる際、
まるで自身が当事者であったかのようになるまで、
綿密に取材を重ね、調査しているのだろう。
綿密に重ねられた取材によって吉村氏はそれらを文章に紡いでいく。
アツい文章なのだ。
若年者では著すことのできないアツい文章をひたすらに書き進めていく。
はっきり言うと読んでいて疲れる。
「そんなに次から次へと厄介事を起こさないでくれよ」と思う。

この小説、黒部渓谷にある発電所を作るための隧道、
トンネルを掘り進める話である。
女性が登場する隙間さえなく男の汗臭さばかりが前に出てくる。
なんとも吉村氏の好きそうな題材だ。

吉村氏が出てこないと書いた。では誰が出てくるのか。
当然、小説の作中人物である。
吉村氏は丁寧に一人一人を書いていく。
アツい文章で一人一人を丹念に紡いでいく。
アツい文章の隙間から登場人物への底知れぬ愛情が感じられる。

文/ アトレ大井町店・HK

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