412『狂乱廿四孝』/北森鴻/東京創元社 創元推理文庫/1,100円+税外部リンク 
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悲劇の美貌の女形・三世澤村田之助と画鬼・河鍋暁斎。
この異な組み合わせで廻るミステリー。素材が魅力的だと読むのも興味津々。
虚と実がない交ぜになり、「あれがこうきて、そうなったか」と最期まで飽くことなくイッキ読み。

三世澤村田之助。その美貌と口跡の良さで立女形に上り詰めたのはわずか16歳の時。
田之助髷・田之助下駄・田之助襟等、田之助にかかわるもの全てが大流行するなど、絶大な人気を誇る。
が、脱疽に侵され、22歳で片足を切断、その3年後には両足を、そして両手までも失う。
しかし、そんな境遇になっても舞台に立ち続け、凄絶なほどの美を振り撒いたという。
 

話は、この田之助が両足を切断後、廿四孝の八重垣姫の舞台を勤めることから始まる。
両足がないながらも田之助の動きはスムーズで観客を熱狂の渦に巻き込み、連日満員御礼になるほどの人気ぶり。
その動きを可能にしたのが大道具・長谷川勘兵衛。彼の作ったカラクリが田之助に新たな命を吹き込んだのだった。
猿若町が田之助の復活で盛り上がっていた頃、河鍋暁斎が官憲につかまる。その直前、暁斎は尾上菊五郎に幽霊画を手渡していた。
一見何の関係もなさそうな田之助の復活と暁斎の幽霊画。これが猿若町で次々と起こる事件とからまり、虚と実が入り混じるミステリーを作り上げてゆく。


田之助の脱疽、暁斎の幽霊画、菊五郎の幽霊画コレクション、八代目団十郎の自殺。
どれもが事実であるからこそ文章を追いながら、あちらにこちらにと思いが移る。移るからこそ飽きないし、真実は何処と捜しまくる。
謎解きもさることながら伏線が気になって気になって仕方なく、気が付けば最後の一行を残すのみ。
読み応えある一冊だった。

文/ たまプラーザテラス店・MH

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