052『さらさら流る』/柚木麻子/双葉社/1,400円+税外部リンク 
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元彼が自分の裸の写真をネットに公開しているのを見つけたら、あなたは平気で日常を過ごせますか?

自分の裸の写真がネット上に公開されているのをたまたまみつけてしまった主人公・菫。
犯人は6年前までつきあっていた彼しかありえない……。
 
菫は親友の助けを借りながら真相を明らかにし、同時に大学時代4年間つきあった彼との出会いを振り返る。
ほんとうに彼の仕業なのか? そうであるなら理由は何か?
家族同然だった彼に自分はそんなにも恨まれているのか?
現在と過去を往復し、彼女と元彼の視点両方を描きながら物語は進みます。
 
とにかく主人公がとてもチャーミング。
家族に愛されて育った28歳の女性です。
対して元彼は腹違いの弟がおり、義母からの愛情をあまり受けられず屈託を抱えた性格。
大学卒業後、お互い就職し、ストレスが増すにしたがって関係が悪化し、別れをむかえます。
 
思いもかけないリベンジポルノ的行為に彼女は色を失いますが、少しずつ彼を知り、また自分をも見つめ直す。
その過程が痛々しくもさわやかで、すっかり大人になってしまった私も「はじめての恋愛ってそうだよなー」と感じる描写が随所にあり、あまずっぱい気持ちにさせられます。
 
他人と深くつながることは見たくない自分をつきつけられることでもあり、大人になっていく彼女を応援したくなります。
「彼が憎んだ、私を許そう。」
全ては本の帯にあるこの一文に集約されるのですが、「許し」や「寛容」、また人が育つ「家庭環境」「愛情」といったことを
考えさせられる、そんな一冊です。
女性にはぜひ読んでもらいたい作品です。

文/横浜駅西口ジョイナス店・MT

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