910『丹生都比売 梨木香歩作品集』/梨木香歩/新潮社/1,500円+税外部リンク 
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真冬の冷えた風のない朝、湖に張った氷の上に真っ白な“花”が咲くことがあります。
“フロストフラワー”と呼ばれるこの現象の正体は氷の結晶。湖に張った氷の上に、氷から昇華した水蒸気が付着して結晶を作り、成長して美しい花のような形になるのです。
一夜にして白い花に覆われた湖は、幻想的で美しく、奇跡のような光景だといいます。

梨木香歩さんの短編小説9篇を収めた『丹生都比売』は、まさにフロストフラワーの咲く湖のような本。ひとつひとつの作品が透き通るように美しい。
生と死を分かち難く包含する世界への、梨木さんの澄んだ眼差しや清らかな姿勢の結晶が、奇跡のように本の中に広がっています。
特におすすめしたいのが『夏の朝』と、表題作でもある『丹生都比売』の2篇です。

『夏の朝』は、少し「変わった」ところのある6歳の夏ちゃんの物語。
梨木さんの代表作『西の魔女が死んだ』で、おばあちゃんに救われ、励まされた方にはぜひ読んでいただきたい作品です。自分でも気がつかないうちに心が凝り固まって身動きが取れなくなった時、きっと寄り添い、心を解き放ってくれるはずです。
最後のパラグラフの美しさは、もう息を呑むほど。初夏のみずみずしい朝にこの物語を読めたらどんなに素敵か……!

そして『丹生都比売』は壬申の乱前夜、天武天皇(大海人皇子)の子である草壁皇子が、吉野の里で過ごした日々の物語。
母である持統天皇の心に巣喰う闇と、それでも母を想い、愛されたいと願う草壁皇子の必死さや孤独が描かれます。
小川未明の『野ばら』や『赤い蝋燭と人魚』のように美しく芯のある言葉で紡がれる哀しさが胸に迫ります。文章が本当に美しく、音読すると更にその美しさを味わうことができます。

濃紺の地に銀色で押された文字の装丁も、この本の静かに澄み渡る世界観によく合っていて素敵です。
色違いの深緑の装丁である『西の魔女が死んだ-梨木香歩作品集』(新潮社・1,500円+税)とともに、ぜひ単行本で揃えてみてください!

文/ アトレ恵比寿店・SY


『西の魔女が死んだ - 梨木果歩作品集』
梨木果歩/新潮社/1500円+税
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