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2019年2月に『この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ』を秀和システムから刊行された新井見枝香さんは、メディア出演も多い現役書店員、かつエッセイスト。
刊行記念トークイベントのお話を前後編に分けてお届けします。
 
新井さん、この日はストリップ小屋の帰り掛けに有隣堂アトレ川崎店に寄り道してくださいました。

開催2019/3/22(金)19:00~
会場有隣堂アトレ川崎店 店内

※このイベント後に新井さんは転職されて、2019年5月からはHMV&BOOKS 日比谷コテージにお勤め予定。
 
[司会より] 事前打ち合わせなし、ぶっつけ本番のトークイベントとなりましたが、お相手はご自身でも数々のイベントを仕切る新井さん。メディアからの取材も多く、場慣れされているので、なんとかなるさと気楽な状態でお話スタートです。

本屋の新井さん、著者の新井さん

新井見枝香さん(以下敬称略、新井) 今日、たぶん初めましての人が多いと思います。ありがとうございます。

――都内のイベントご出演が多い新井さんですが、本日はめずらしく神奈川県での開催です。

新井 しかも有隣堂さんで。

――三省堂さんと有隣堂、じつはライバルです(笑)。

新井 ね(笑)。

――本日のトークイベントは新井さんのおかげで開催できました。ありがとうございます。
1冊目のエッセイ『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』がすでに6刷、大ヒット。講談社から『本屋の新井』、その後刊行されたのが今回の『この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ』です。


『この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ』
新井見枝香/秀和システム/1,000円+税
HonyaClub詳細 在庫検索

店長 本日の差し入れをどうぞ。混ぜてお飲みください。

新井 ありがとうございます、めっちゃおいしそう。帰り、みんなも飲んでみてください。

ドリンクと新井さん、新井さんコーナー前にて

この日は差し入れドリンクが。
有隣堂アトレ川崎店と同じ3Fにある「コーヒー&ワインスタンド トロッコ」さんの
タピオカ入りイチゴミルクです。
川崎の有隣堂へお越しの際は、
ぜひトロッコさんにも寄り道を。
→ 店舗情報 https://www.atre.co.jp/store/kawasaki/shop/detail/1841

――あ、おいしそう。新井さんは糖分がなきゃダメって伺ってます。ご堪能ください。
本の出版はどのように決まったのでしょう?

新井 もともと書くことは好きだったんですけど、秀和システムの編集者さんに声をかけていただいて。
本屋の話とかブックガイドとか、ありがちな本の話はいくらかオファーがあったんですけど、そういう本って正直つまんないなーって。
でもこの編集者さんは「なんでもいい」と仰ったので。最初は恋愛エッセイにしようと思ったんですけど(笑)、なんでもよすぎるだろうと。で、こうなりました。

――本屋さんが書いた本は、本屋の業界内で「これ、いい!」と盛り上がるだけになってしまうことも多くて。でも『この世界は思ってたほど~』は “業界の本” ではなく一般向け。働く女性のおもしろ日常エッセイとして普通に楽しんでいただきたい次第です。
新井さんはメディアの露出が続いています。そのうち新井さんにレジを打ってもらうことがプレミアになるかもしれません。

新井 うちのレジ、1列に15台ぐらいあるんですよ。なのでレジで「あっあそこに知り合いが並んでる」と思っても、タイミング合わそうとしても大抵「あああああ(別のレジへ進むのを見送って次の方)、どうぞー」みたいになっちゃう。
逆に、タイミングが合うと素敵なことのような感じがして。でも、なかなか合わないですね。

――神保町の三省堂さんにお勤めです(2019年3月当時)。ご担当は文庫とのことですが、片手で何冊くらい持てます? “いっぱい持てます自慢” とか、ありますか?

新井 (笑)片手で? すごい持ちますね。もう、ここのリーチ(腕を伸ばして、手のひらから肩まで)が足りるぐらいは持ちます。こんなに持たなくてもいいんだけど、本当は。でも持ちたい。同じ本をそんなにいっぱい持つことって人生においてないじゃないですか、どんだけ本好きでも。それができるのは、いい。

――以前の新井さんのインタビューで「見たらその本がイケるって分かる」と。そういう勘所って、具体的にどんな感じなんでしょう。

新井 うーん、分かりやすいアレでいくと、この本(『この世界は~』)の裏表紙に私の似顔絵らしきものが入ってるんです。まんきつさんが描いてくれて。
これを見たときに、「あっおもしろいね」って悪ノリして「もっとやっちゃっていいよ」って言ったんだけど、売り物として考えたら「それは売れないな」という勘が働いて。
表紙、ほんと大事ですね。裏表紙のこれだと「わ~おもしろい。あっはっは」、で、たぶん本を置いちゃうと思う。「これを買う自分って……」っていう。
この表紙なら楽しそうな感じがするのと、タイトルと絵のアンバランスさで「どういうことなんだろう?」ってなる。

――作家さんとのエピソードも登場します。やりとりは日常的に多いのでしょうか?

新井 一番よく会うのは、ミステリー作家の中山七里さん。親戚のおじさんみたいな感じがあって、なんかもうありがたみが薄れていて。
本を読むと「凄い人だな」と思うんですよ、「毎回こんなに驚かされる!」と思うんですよ。でも本人を見すぎていて、そこと繋がらなくて。

――書きたいこと、まだまだたくさんありますか?

新井 そうですね。とくにいま見てきたストリップなんですけど、相田樹音(あいだじゅね)さんとの出会いが最近すごく自分の中では大きくて。
もし機会があったらググってほしいんですが、ネット上で桜木紫乃さんと対談をされているんです。そういう過去があったのを全く知らないでステージを見たんですけど、いっぱい見た踊り子さんの中で、何か特別なものがあるって感じていて。読んで「あっなるほどな」って思ったので。
何か、こうね、“ある”んですよ。
旗振って、みなさんを連れて行きたい。「さあ小屋へ!」って。すごいっすよ。

――桜木紫乃さんも新井さんも、小屋に通ってらっしゃるんですね。

新井 桜木さんは10年以上ストリップを見ていて。いまは「スト女」といってストリップに行く女の人が増えてきてるんですけど、桜木さんが行き始めた頃は本当に女性はいなくて、お客さんがビックリする感じだったと思う。
いまちょうど『裸の華』という桜木柴乃さんの本が文庫化されてます。元ストリッパーが主人公なので、ぜひ読んでみてください。


『裸の華』
桜木紫乃/集英社 集英社文庫/700円+税
HonyaClub詳細 在庫検索

新井 あと、発売はまだ先ですが、桜木柴乃さんの『緋の河』! 大変です、これは。たぶん桜木柴乃史上、最ッ高に熱いと思います。桜木さんにしては長い物語なんですけど、必要なんです、それは本当に。いやー、ほんと良かった!

――今までの作品ともまた違う感じですか?

新井 なんかこう、「……また抜けた! まだ先があるんかい!」っていう感じがしました。

――また一つ上のレベルに。

新井 そう、すごい進化してる。文学賞とか獲ると、読む側は「あの受賞作、読んだ読んだ」で終わってしまいがちかもしれないけど、書き続けている作家は進化し続けているので。ちょいちょいでもいいから、読んでほしい。

――「作家は書き続けている限り進化している」!

新井 ほんっとそう思います、読んでると。私も進化しなくちゃ。

――新井さんも進化しますよ。
間近で見られて、応援できる喜び。

新井 ですね。

→ [後編]に続きます


『この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ』
新井見枝香/秀和システム/1,000円+税
HonyaClub詳細 在庫検索

『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』
新井見枝香/秀和システム/1,000円+税
HonyaClub詳細 在庫検索

『本屋の新井』
新井見枝香/講談社/1,300円+税
HonyaClub詳細 在庫検索

新井 見枝香 (あらい みえか)さん

東京都出身、1980年生まれ。アルバイトで書店に入社し、契約社員数年を経て、正社員として文庫担当。
文芸書担当が長く、作家を招いて自らが聞き手を務める「新井ナイト」など、開催したイベントは300回を超える。独自に設立した文学賞「新井賞」は、同時に発表される芥川賞・直木賞より売れることもある。出版業界の専門紙「新文化」にコラム連載を持ち、文庫解説や帯コメントなどの依頼も多い。テレビやラジオの出演も多数。
著書に『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』『この世界は思ってたほど、うまくいかないみたいだ』秀和システム、『本屋の新井』講談社。


新井さんがご覧になった、
桜木紫乃さんと相田樹音さんの対談はこちらかも
>> 小説すばる「裸の華」連載開始記念 桜木紫乃・踊り子さんに聞く|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー


司会: 市川(有隣堂 店売事業本部)
編集: 本の泉スタッフ(M)

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