


都内のあるマンションでルームシェアをする男女四人が織りなす物語。
章が進むにつれて、四人がなぜ同居するに至ったのかが明かされていき、単なる青春群像劇ではなく一種のミステリーとしても楽しめる。
特別にそういったルールを設けたわけではないけれど、皆、同居人の素性を深堀しない。
それゆえに四人のあたたかいようで冷め切った関係がうかがえ、読者の胸に迫る。
※終章のネタバレを含みます※
終章では最年長である男性が語り部となる。
いままで比較的温厚な人物として扱われていた彼が、実は猟奇的な性格の持ち主だったことが判明する。
しかし、他の三人は彼を咎めるでも、軽蔑するでもなく、ただただ笑って迎える。
こんなにも怖く、そしていびつなラストシーンを私は他に知らない。
したがって読後感は決して爽快とはいえないが、いつまでも湿った空気が胸に残るのはたしかである。
酷暑の夏だからこそ読んでおきたい小説だ。
文/

