日本社会のしくみ『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学
小熊英二/講談社 講談社現代新書/1,300円+税
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分厚い新書である。総ページ数600頁。新書とは思えぬ。当然価格も新書のそれではない。

ただ、著者・小熊英二の本は『単一民族神話の起源』『〈民主〉と〈愛国〉』など大体分厚い。
しかしこの人の書くものは概して読みやすい。
事実を丹念に調べ、数多くの資料に当たり、それらを追っていくという地道なことを淡々と文章にしている。

なので論の積み上げはとても細かいが、論理の飛躍やポンと著者の考えが披瀝されその後は著者の考えに合わせて資料を当てはめていくというようなことはまずしない。
正当な学者の仕事である。

本書『日本社会のしくみ』では副題にもある「雇用・教育・福祉」に関してその歴史を追っていく。
正直、第1章の出だしから驚かされた。えっ……? そうだったの??
その後も数多くの資料の引用から、そうだったんだと思うことしきりであった。
久しぶりに著者の作品を読んだが、本書は近年の作品の中でまちがいなく上位に入るヒット作だ。おもしろい。

本書を読むコツ(?)のようなものを1つ。
小説や漫画でそれをしてしまうと興ざめになってしまうのでやらないが、まずは結論部分だけ(本書で言うと終章とあとがき)をまず読んでしまう。
そうすると結論が頭にはなんとなく入るので、1章から辿っていっても意外と論がスーッと入っていきやすくなる。

ちなみに本書では「結婚」に触れていない。
おそらくそこにまで手を出した場合、1冊では収まりきらないと判断されたのだと思う。

本書の終章の末尾には、著者から読者への設問が設定されている。
はたしてそれに対してどのような結論を出すのか?
著者はこう考えるという答えは示されているが、あなた自身の結論は? という問いかけで終わっている。

今後の社会の行方を考える上で1つのいい土台となる1冊である。

文/ 武蔵小杉東急スクエア店・SM


『単一民族神話の起源
〈日本人〉の自画像の系譜
小熊英二/新曜社/3,800円+税
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『〈民主〉と〈愛国〉』
小熊英二/新曜社/6,300円+税
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