


羽州ぼろ鳶組シリーズ9作目。
訳あって致仕した武家火消・松永源吾は、出羽新庄藩火消の再建を託される。
弱小藩故の厳しい台所事情の中で火消人足の人集めから、個性豊かな面々の養成、教育。
江戸の華と謳われる数々の火事に立ち向かう内、やがて江戸町民に揶揄された「ぼろ鳶」が敬意と親しみの愛称となっていた。
今回の舞台は天下の台所・大阪。
今作で9作目。力強く歯切れの良い文章は変わらない上に、火付けに関わるミステリ要素、個性的キャラの織り成す人間関係、田沼意次と一橋治済の幕閣を揺るがす権力闘争といった要素が盛り込まれ、ダイナミックな展開に痛快な文句の応酬がたまりません。
第1作『火喰鳥』が発売されたのが、2017年3月。
これがデビュー作とは思えぬ完成度の高さに驚かされました。
時代小説ファンなら、佐伯泰英の居眠り磐音シリーズを初めて読んだ衝撃に近いと言えばお分かりいただけるかも。新しい書き手が現れた喜び、期待に包まれました。
2年を経て、今シリーズ以外の他にも進行中のシリーズや直木賞候補に上がった単行本もあって、作者の精力的な仕事ぶりはまさに期待どおり。
読後の壮快感は保証いたします。
まだ今村彰吾を読んだことが無いという方には、ぜひ1作目から手に取っていただきたいです。
文/ 伊勢佐木町本店・KO
