159『わたしのいるところ』/ジュンパ・ラヒリ:著 中嶋浩郎:訳/新潮社 新潮クレスト・ブックス/1,700円+税外部リンク 
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ジュンパ・ラヒリは2000年に『停電の夜に』が日本で翻訳されてから、ずっと注目し続けている大好きな作家だ。

そして英語ではなくイタリア語で書かれた今回の新作も、そんな期待を裏切ることなく、彼女の新たな魅力を突きつけてくれた。

語り手でもある40代後半の女主人公は、独身で一人暮らし、大学教師をしている。
その彼女の日々の暮らしやこれまでの人生が、46にもなる短い章を重ねるごとに少しずつ差し出されてくる。
これはエッセイなの?と思わず勘違いしてしまう小説だ。

カフェで、プールで、美術館で、道端で、電車の中で、彼女は他人を、そして自分自身を観察し、感じ続ける。
その人間像や関係性の描き方に、ラヒリならではの鋭い感性が光る。

あるいはパートナーになれたかもしれない男友達、その男友達の妻との友情、ずっとうまくいっていない母親、美しくて魅惑的なネイリスト、たまたまホテルで隣り合わせただけの哲学者、三角関係に陥った女との奇妙な仲間意識……
例えば、P.32「孤独でいることがわたしの仕事になった。」で始まる章は、孤独というものの本質を見事についていた。

どの章もちょっと突き放した終わり方で、余韻が残る。その余韻たちが少しずつたまっていくのを感じながらページをめくる。読了後、それらがものすごく大きな塊となって私の心を占めているのに気づき放心した。

文/ 新百合ヶ丘エルミロード店・YM
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