


“職業柄”と言うわけではありませんが、私はヒトと本の係わり方に多大な興味があります。
ましてや尊敬するクリエイターである小島監督のこととなれば尚更です。
まず著者の小島秀夫さんについてご存じない方の為に簡単に紹介しますと「メタルギアソリッド」シリーズや最近では「DEATH STRANDING」を生んだ天才ゲームクリエイターで、世界中に熱狂的なファンをお持ちの方です。
そして『創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち』は、そんな小島監督が好きな本や映画について綴った散文集『僕が愛したMEMEたち―いま必要なのは、人にエネルギーを与える物語』(2013年/メディアファクトリ-刊)を再構成し改題したものとなっています。
余談ですがタイトルにある「MEME(ミーム)」はリチャード・ドーキンスの世界的なベストセラー『利己的な遺伝子』に出てくる言葉です。
「脳内に保存され、他の脳へ複製可能な情報」のことで、例えば「物語」なんかがそれにあたります。
この『利己的な遺伝子』という本も非常に面白いので、興味のある方にはぜひ読んでいただきたいと思います。
さて話を『創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち』に戻しますと、実際に小島監督の作ったゲームをプレイされたことのある方はもちろんのこと、そうでなくても本や映画がお好きな方なら共感する部分も多くて、一度読み始めたら最後まで一気に読んでしまいたくなるようなエッセイ本です。
何といっても監督の本の紹介の仕方が素晴らしく。私もまだ読んだことのない本は読みたくなりましたし、読んだことのある本はもう一度改めて読んでみたくなりました。
どんなに忙しくても毎日書店に通うという小島監督が自身の感性で選んだ作品は、どれも興味深いのは勿論のこと、さらに監督自身の作品への影響も垣間見えるところがファンには堪らないところなのではないでしょうか。
そしてこの本の中で何よりも私を惹きつけたのは小島秀夫という人間が「面白い本を探すという行為」を楽しんでいるという点です。
それが伝わってきた時、私の心は震えました。忘れかけていたことを思い出させてもらったように感じたからです。
最後に、小島秀夫を通して普段書店に足を運ばないような若いゲームファンが本を好きになってくれることに期待をしつつ、私も面白い本を探し続けるこの日々を誰よりも楽しんでいこうと思います。
文/ 厚木店・KG
