


誰もが一度は目にしたことがあるであろう、国宝「風神雷神図屏風」。
これを描いたのは、琳派の祖といわれる俵屋宗達である。
安土桃山時代末期から江戸時代初期にかけて京都で活躍し、時代を超え多くの芸術家に影響を与えた人物が、残された作品以外については謎に包まれ、生没年月日さえ不詳。
そんな謎に満ちた宗達の青年期時代を、アート小説第一人者の原田マハさんが魅力的な小説に仕立て上げた。
20XX年、京都国立博物館研究員・望月彩のもとに、マカオ博物館学芸員・レイモンド・ウォンが現れる。
彼に導かれマカオを訪れた彩が目にしたのは「風神雷神図」と天正遣欧使節団の一員・原マルティノの書名入り古文書。
ここから、誰も知らない、そして誰も思いもしなかった宗達の前半生が描かれてゆく。
織田信長、加納永徳、宣教師・ヴァリニャーノ、カラヴァッジョ、宗達を未知への旅へと誘った様々な人々との出会い、心躍る遥かなる旅路。宗達が宗達になる前の冒険譚。
史実とは全く異なるものであろうにせよ、「小説の面白さ」をたっぷりと味わえる一作だった。
文/ たまプラーザテラス店・M.H
