020『敵の名は、宮本武蔵』/木下昌輝/KADOKAWA 角川文庫/680円+税外部リンク 
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武蔵に敗れた者の視点で描かれる連作短編、『宇喜多の捨て嫁』でデビューした木下昌輝の新解釈「宮本武蔵」。

小次郎、吉岡、シシドなど、吉川英治の「宮本武蔵」でもおなじみの強敵が登場するが、そのどれもに、これまでのイメージをくつがえされる。


武蔵が一匹狼ではなく、弟子を引き連れているのも正直驚いた。
これは史実に基づいており、かの有名な巌流島でも、彼は弟子を連れていたらしい。

シシドの悲恋、復讐に燃える小次郎の意地など、どのエピソードも一筋縄ではいかないオチがあり、武蔵通の方でも驚嘆するだろう。

だがやはり作中最も強烈な印象を残すのは、武蔵に数々の試練を与える父「宮本無二斎」。
変形十手の使い手で悪鬼のような強さ……。
「血も涙もない、こんな親いるのか」と読み進めるが、無二斎の抱える悲哀と親子の結末にまさかの慟哭。

 
武蔵初心者の方にも絶対に楽しんでいただける一作。

文/ アトレ亀戸店・KY

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