


先日、テレビに湊かなえが出演していた。
この人の心理ミステリが大好きで、大抵は読んでいる。
様々な感情を抱えて破滅に向かう女性達を多数描いてきた著者は、どんな人だろう……キリっと眼光鋭い女性なのだろうな……と勝手に想像していたのだが、意に反してその姿はふんわり優しく、日々の生活習慣もこれまた俗に言われる作家のものではなかったのだ。
今回紹介する本書は短編集であり、話題となった極上の傑作集である。
テーマは“湊かなえ”ならではの「母と娘」「男と女」である。
年代的にいえば、私は母の立場で感情移入するのだが、娘の立場の読者も然り、どちらの側から見ても正しくて、また思う所ありなので面白い。
それぞれが欠点を持つ人間であり、でもなぜかその一生懸命さが可愛く、いとおしく思えてしまう。
そんな人間が転落してゆく姿に作者の優しさが見え隠れする。
まるで一緒に悩み、苦しむかのように、奥深くまで入り込む。
そんな心の描写は正しく読者の心、闇である。
ふわふわとした優しい女性が描く、オセロの様な反転理論。
鮮やかな反転である。
一気に白から黒へ変わる心理。
角度を変えると全く違って見える読後感。
湊かなえの魅力はここにあるのだ。
まずはこの1冊からぜひ一読していただきたい。
この魅力を体感したら、また次へとハマってゆくこと請けあいである。
文/ アトレ新浦安店・A.S
