


「私」と「弟」は仲の良いきょうだい。
弟は四才の頃、ノートを買ってもらい、おはなしを次々に書いていきます。
弟の書いた物語の読者は私。妙ちきりんな物語を読んで、私は首をかしげたり大笑いしたりします。
ある日、ぶらんこを180度になる程こいでいた弟は、のどに雹のかたまりをぶつけ、酷い声になってしまいます。
その後弟は必してしゃべらず、筆談で会話をするようになり、いろいろな「動物から聞いた」話をつづり始めます。
人は言葉を必要とします。空中ぶらんこ乗りが息をあわせて手と手をつなぐように、言葉をつなぎます。孤独に落っこちてしまわぬように……その手段は、ノートであり、絵葉書であり、時には犬のおなかの落書きだったりします。
「私」と「弟」とその家族が、言葉をつないで癒し難い現実からゆっくりと回復していきます。
ユニークなモチーフに彩られた再生の物語。
文/

