792『2月の勝者 絶対合格の教室1巻/高瀬志帆/小学館 ビッグコミックススピリッツ/552円+税外部リンク 
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「中学受験は課金ゲーム」
こんな良い意味でも悪い意味でも刺激的な言葉を発する、このマンガの主人公である塾講師・黒木蔵人。

受験のハウツー本みたいな内容なのかと思って読み始めた自分は、主人公のこの言葉に非常に驚かされた。

中学受験とは無縁の生活を送っている自分も、昨今の親の経済格差から生じる教育格差についてなんとなくわかっているつもりではいた。
そして、中学受験はお金がかかるもの、漠然とそう言うイメージも持ってはいた。
だが、ここまで直接的な言葉を目にする事も無かったので正直面くらってしまった。
そして、話を読み進めていくうちに、この言葉はある意味真実であるのだなと感じさせられる。

中学受験を勝ち抜くために塾通いをしていると、通常の月謝だけでなく夏季講習、直前講習、レベルの高い塾であれば、塾の勉強に追いつくための個別指導や家庭教師の追加などなど、これでもかと追加料金が発生していく。
そのどれもが合格への可能性をわずかでも押し上げるために用意されているものであれば、受講しないよりは受講した方がいいに決まっている。
だが、その全てを受講できるかどうかは、家庭の経済状況に左右される。
もちろん、その子の現在の学力によっては不必要な物もあるだろう。
それでも、そういったものを可能な限り積み上げることができた方が受験に有利であると言われれば、それはまさに“課金ゲーム”である。

しかしながら、このマンガはそういうことを題材にしながらも、中学受験に否定的なわけではない。
中学受験そのものを否定するわけでも肯定するわけでもなく、そこで描かれるのは中学受験に真剣に向き合うからこそ生まれる、子供達やその親達それぞれの葛藤であり、受験が近づくにつれ浮き彫りになってくる親子が抱える家庭の問題なのである。
中学受験という一大イベントを通じて、そういった葛藤や問題に対して、子が、親がどう向き合うのかという各家庭で繰り広げられる人間模様を描いているところが、このマンガの最大の魅力である。
きっと、中学受験を体験された方、今まさに体験中の方は、共感することも多々あるだろう。
しかし、中学受験を知らない、無関係の方でも、家族の物語には共感したり、色々と考えさせられる事があるはずである。

中学受験に縁がある方はもちろん、中学受験に無縁な方にもぜひおすすめしたい一冊である。

文/ アトレ新浦安店・H.S

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