『旅のつばくろ』/沢木耕太郎/新潮社/1000円+税
「深夜特急」の沢木耕太郎の、国内の比較的短い旅行に関するエッセイ。
旅行といえるのか、日帰りで訪れた鎌倉から、訪れた土地の仕事にからんだ思い出。
若いころの旅を補完する旅など。
若いころには、思い込みというのか、意地というのか、何かが邪魔をして、人と話せなかったり行動をおこせなかったりすることがある。
その人に会えなくなってしまうと、もっと違う接しかた、話す機会を持っていれば、と思う。
著者にはインタヴューで一度だけ会った、酒井美意子さんが、そういう方だったようだ。
海辺へ旅した文章が印象に残る
風の岬」という一編など。
ただ私にとって一番印象に残ったのは、若い頃東北を旅して、北上駅の待合室で一晩をすごした文章だ。
今は新幹線が通って、沢木少年が仮眠した古い駅舎はなくなってしまった。
私は母が北上の出身だったので、子供のころは夏に北上に帰省していて、北上の古い駅舎の記憶がある。
もう、駅舎の姿はぼんやりしているが、昔の北上の街や親戚、祖母の顔なども思いだした。
あの駅の、あの待合室の、あの木のベンチに著者はいたことがあるのだなあ、と思った。
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