


料理本を買ったのなんて、何年ぶりだろう?
ふと目についた真っ黒な表紙。分厚い! これが料理本?
中身は写真だらけだ。調理される食材の数々。煮える豆、焼かれる卵、包まれるワンタン、千切りされる人参、蒸されるかぶ……生き生きとしたそれらを眺めているだけでなんだか圧倒される。自分も毎日台所に立って、同じような景色を見ているのに、この新鮮な感情はなんだろう!
年々夕食作りが億劫になっていた。それなのにコロナ禍で作る機会は増えてしまった。
あー、今日は何にしよう? ちょっと気分が下がっってしまうその夕刻を、せっかくならもっと楽しい時間に変えたかった。そんなわたしの思いに、小さな風穴を開けてくれたかもしれないのがこの黒い一冊。
レシピは基本的にシンプルで、食材そのものを生かした簡単なものが多い。盛り付けも大ざっぱ。 作れる! 作りたい! 出汁をとった昆布を佃煮にしたり、本来なら捨ててしまう茄子の皮をしば漬けにしたり、そんなアレンジを丁寧におしえてれるのも嬉しい。
自炊初めての新人も、わたしのように極めてもいないうちから料理に飽きてしまった主婦もきっと楽しめる内容。真っ白なシーツを干した広いバルコニーで、一人空に向かって両手を伸ばす高山さんの写真を見ていたら、わたしもなんだか晴れ晴れとした気分になってきた。
