『北条五代』 上/火坂雅志・伊東潤/朝日新聞出版/1,900円+税
これは、小田原店が紹介すべき作品。
火坂雅志氏が亡くなられた後、未完の作品を伊東潤氏が引き継いで完成させたとのことです。
同じ時代小説作家とはいえ、資料、興味、知識、火坂氏の作品の意図や志を受け継げるか、大変なことだったと思います。
火坂氏の描いた部分は、北条の勃興期。勢いがあり、関東に新しい国を創る志があり、ひろやかな気分で読めます。
ただ私は、伊藤氏の書かれた文章のほうが、読みやすく感じました。
京都からやって来た青年が、どのように勢力を持ち、北条を名乗るようになったか。
何を理想とし、民をどう思い、乱世を誰とどのように戦ったか。
そしてその息子、子孫たちがどのように受け継ぎ、守ったり広げたりしようとしたか。
帯文に「数ある戦国大名のなかで、これほど民政に心を砕き、民に慕われた男もあるまい。その意味で早雲は異色の武将」とあります。
そして読み終わってみると、その早雲から始まる北条氏は一族に争いがなかったことが、思われます。
兄弟同士、親子であっても殺しあうことが珍しくない戦国時代に、順当に代替わりし力を合わせてことに当たっている。
結束の強い一族は他にもあるでしょうが、5代続いたのは、異色の一族と言えるでしょう。
小田原に住む人なら、毎日見る小田原城。
小田原に住まなくとも、神奈川に住む人なら、身近にある川の名や地名がでてきます。
戦国時代の理想を追おうとした一族の物語を読み、数百年前、自分が今住む土地を彼らが歩いていたと実感してみてはいかがでしょうか。
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