『彼女の知らない空』/早瀬耕/小学館 小学館文庫/680円+税
表題作の『彼女の知らない空』というタイトルにはロマンチックな響きさえあるが、“彼女“には決して知らせることのできない“空“には主人公の苦悩と葛藤が渦巻いているのであった。
表題作の『彼女の知らない空』というタイトルにはロマンチックな響きさえあるが、“彼女“には決して知らせることのできない“空“には主人公の苦悩と葛藤が渦巻いているのであった。
舞台は憲法9条が改正され自衛隊に交戦権が与えられた日本。
航空自衛隊に所属する主人公にはある任務が与えられていた。
それは、ある国の反政府組織を遠隔操作の無人機で攻撃すること。
彼の妻が見上げる空から遥か彼方、知らない空で主人公は孤独に戦争をしている。
「憲法改正」とりわけ9条の改正については、今日において多くの議論が交わされており、近い将来、憲法が改正されたら自衛隊による「敵地爆撃」ということは実際に行われるのかもしれない。
決して他人事ではない、と思い非常に興味深く読んだ。
本作は、表題作の「彼女の知らない空」のほか、組織の中で抗い難い現実に立ち向かう人々のジレンマを描いた全7編の短編集。
何かと世知辛い現代を生きる私たちにとって、思わず共感してしまうこと請け合いのストーリーたちなので、ぜひ手に取って読んで頂きたい。
文/ 戸塚モディ店・MS